リモート・ワーキング (2020/3/9)
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、企業は時間差出勤やリモート・ワーキングを始めている。今回の感染症騒ぎは企業活動に大きな影響を与えた。しかし、前向きに捉えれば業務形態を改善するいい機会になるとも言える。
日本の生産性が先進国の中で低いことは長きにわたって指摘されてきた。工場のような製造現場の生産性は高いが、その半面、オフィス・ワーカーの生産性は低い。
特にICTの活用で遅れている。窓際に追いやられた中高年サラリーマンがEメールくらいしか使えず、エクセルやワードの高度な機能となると全くお手上げという話はあちこちで耳にするところである。
社内会議も同様。大して意味もない会議にいちいち社員を集めることに疑問を持つ人は多かろう。肩書きだけ管理職待遇のおじさん達には、それが自らの存在意義を示す格好の場になっているかもしれないが、実際に汗を流している若手や中堅どころの社員にとっては単なる時間の無駄でしかない。
私は独立してコンサル稼業を営んでいるが、特に顔を合わせる必然性がない限り、スカイプで会議を済ませている。
東京で1時間打ち合わせるには、逗子から1時間半をかけて出かけて会議に出席しなければならない。往復の移動に3時間、会議で1時間の合計4時間を使うことになる。つまり、半日はこれで潰れてしまう。少々もったい話である。
企業が負担するコストの点でも、リモート・ワーキングにより大きく改善ができる。
東京の丸の内・大手町エリアで言えば、オフィスの賃料は坪あたり4〜5万円が相場である。業務形態を合理化すれば、机を無くせる。これで相当のコスト削減が可能になる。
私は15年前にコンサルティング会社を早期退職したが、この会社では部門によっては社員の個別の座席を廃止し、共通のテーブルと個人のロッカーだけで済ませている。これによって、ほとんどオフィスにいない社員には個別に床面積を配分せず、費用の無駄を省いている。
今思い返せば、私がそこで働いていた当時、1週間のうち半分は会社に顔を出さないことはごく当たり前であった。プロジェクトの締切に追われた時には、家で徹夜することも珍しくなかった。
チームで行う仕事であっても、各人の作業分担さえ明確にしておけば、いちいち集まる必要はない。お互いの工程とアウトプットの確認さえ綿密にやっておけば、あとは家で仕事をしようが、客先で仕事をしようが、それ自体問題ではない。
今回の感染症騒ぎは企業活動にとって未曾有とも言える出来事になったが、業務形態を大きく改善するまたとないチャンスでもある。もっとも、仕事をしない「妖精さん」たちには辛い時代になるかも知れないが。