霊感商法
(2022/9/2)
安倍元首相の殺害が、統一教会の霊感商法という思わぬ方向に展開した。統一教会問題だけが理由ではないが、結果として岸田首相が外交のチャンスと捉えて決定した安倍元首相の国葬は反対意見に揉みくちゃにされる事態となった。
国葬問題はさて置き、霊感商法、そして統一教会と政治家の係わりは政治の世界を大きく揺るがしている。今朝の日本経済新聞に、「旧統一教会と政治3 「特異集団」対策阻む縦割り 霊感商法の被害相談1200億円 仏はカルト規制、強制解散も 」、という見出しの記事が出ている1/。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の推計によれば、2021年までの35年間に同連絡会に寄せられた被害相談は計3万4537件、被害額は約1237億円という。単純平均すれば、年間35億円である。ちなみに2021年の特殊詐欺被害が282億円であったので、霊感商法も負けず劣らず相当大きな規模である。(ちなみに霊感商法は詐欺まがいであるが、詐欺と認定されているのかどうか、私は知らない。)
今回の統一教会絡みの霊感商法事件を見ると、かつてのオウム真理教事件を思い出す。オウム真理教はサリンガスを使った無差別殺人事件を引き起こして自滅の道を歩んだが、その点さえ除けば、統一教会の霊感商法も五十歩百歩の行いに見える。
先ほど引用した日経新聞の記事によれば、シンガポールとフランスがセクト(カルト)に対する活動禁止を法的に規定しているという。いずれも法外な金銭要求といった行為を定めて禁止措置を取るというのが基本的な考え方のようである。フランスのセクト規制法は対象を宗教団体に限るものではなく、教育団体が指定され事もあるという。
宗教が絡むと、政府、個人を含めて日本は問題への対応に及び腰となるが、フランスのように団体の行為に違法性があるかないかという点で法的な規制を入れることは必要だろう。カルトが社会で引き起こす犯罪は、オウム真理教事件で経験したはずであるが、日本人はいつの間にかそれを忘れてしまったように見える。
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日本経済新聞(2021年9月2日)朝刊