大阪都構想の投票結果 (2015/5/19)

 

 

住民投票の結果は僅少差ではあったが、橋下氏の負けとなった。私にとって興味をそそった点は、年齢層によって賛否の傾向が明確に出たことである。

 

朝日新聞の出口調査では、20代から60代まではいずれの層も賛成が過半数であった。とりわけ、20代と30代は賛成が多数を占め、60%を超えていた。しかし、その賛成の割合は年代が上がると共に低下していく。そして70才以上では、実に反対が61%と賛成を大きく上回った。人間、年を取ると共に変化を嫌い、現状維持を望むようになるというのは、まさにそのとおりであった。

 

投票率は66.83%という近年まれに見る高さであった。年代別の投票率の集計値はないが、朝日新聞の出口調査と最終的な投票結果から推定すれば、70才以上の老年世代の投票率が相当高く、若い世代の投票率は低かったということだろう。少なくとも、年代別の投票者数に大きな変化がなければ、賛成票の方が多かったはずである。

 

ちょっと乱暴だが、ここで言えることは、こんな現実だろうか。

● 老年世代は社会的変化を嫌い、現状維持を好む。そして、積極的に選挙に出かける。

● 若い世代は現状に対する問題意識が高く、変化に対する抵抗感は小さい。しかし、選挙への関心は低い(選挙に行かない)。

 

これとは別に、今朝の朝日新聞の読者の声に、この選挙結果に関して20才の若者(学生)と84才の老人(無職)の意見が載っていた。

 

若者の声は、(大阪の行政制度に)問題があるならば現状維持は止めるべきというものである。加えて、「(都構想あるいはその結果が)分からないなら反対を」という反対派の考えに悪印象を持ったとも言う。これに対して、老人の声は、大金を使って大阪市をばらばらにしても、失敗したら取り返しが付かない。それに、橋下氏の攻撃的な物言いが気に入らないというわけである。

 

若者の政治離れと老人の保守性が日本の政治の方向を決めるとなれば、国力が衰退していくのはやはり自然の流れだろう。抜本的改革に手を付けないまま、ずるずると時を過ごしたバブル経済崩壊後の失われた20年がそうであった。

 

老人世代のかなりは既に生活資金を確保しており、とりわけ現在の年金制度の下では、一番うま味を味わっている。今ここで世の中が変わって、既得権益が侵されてはたまらんと考えるのは、人情というものである。一方、若者世代はといえば、年金の支払いを吸い上げられても、自分たちが今の老人世代が受け取っている受給額が期待できるとは思っていない。おまけに、今の老人達が若かった頃のように、右肩上がりの経済成長と所得の上昇が期待できるわけではない。日々の生活に追われることになれば、政治に無関心となるのも宜なるかなというものである。

 

タックスイーターの声が政治を左右し、タックスペイヤーが政治離れを起こす。まさに活力を失い、老齢化しつつある国の姿を映していると言ったら、言い過ぎだろうか。

 

 

 

 

 

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