ウクライナ戦争の見通し (2023/6/20)
ウクライナの反転攻勢が始まって二週間ほどが過ぎたが、まだその歩みは遅々としている。解放したと発表する集落がある半面、機甲師団が地雷原を進んだもの相当な損傷を被ったという報道もある。その中には、西側が提供した独製の戦車(レオパルドII)4両と米国製の歩兵戦闘車(ブラッドレー)16両の損失1/が含まれる。決して、順調に闘いが進んでいるわけではない。
一方、プーチンは戦術核をベラルーシに配備し、核の使用の可能性をほのめかした。これは西側に対する政治的な脅かしであり、専門家の間では直ぐに核使用に踏み切る可能性は低いと見る2/。おそらくプーチンは、もし核を使えば泥沼化した今の戦況どころか、状況をさらに悪化させるであろう事を理解している。核を使えば、中国やインドの理解を得ることも難しくなる。
ロシアが脅かしに使う核兵器への不安は、ウクライナ戦争で核の使用があるのかという懸念以上に、もしプーチンが失脚してロシア国内が内乱状態になれば、管理されない核兵器が放置され、誰かの手に渡ることであろう。
この夏を越え、やがて秋、そして冬が来るまでに、ウクライナがどの程度の反転攻勢を進められるか分からないが、今年中に決定的な状況を作ることは難しかろう。お互いが飲める条件が余りにもかけ離れすぎている。とてもロシアとウクライナ共に停戦を話し合う状況にはならない。
単なる停戦では、一時的なものにしかならない。停戦条件として、プーチンに二度と侵略しようなどという気を起こさせない仕組みを作らねばならない。それは、長期的にウクライナの安全保障を担保する枠組み作りである。これは米国と西欧諸国にしかできない。
ロシアの軍事力に対抗できるのはNATOしかない。だからと言って、ウクライナが簡単にNATOに加盟できるわけでもない。NATOは軍事的な支援をしても、戦争状態にあるウクライナを加盟させるわけにはいかない。
さらに長期的に見れば、停戦後の復興に入るには、物理的なインフラや建物の復興だけでなく、民主的な政治と統治体制の構築が不可欠である。ウクライナはロシアと違い民主国家であるが、まだ政府の汚職や腐敗という深刻な問題を抱えている。
戦後の復興まで含めれば、まだまだ長い道のりがある。
1/ CNN 2023.06.13
Tue posted at 11:47 JST
2/ The Economist,Live digital event “Ukraine at war: the counter-offensive” June 16th at 5pm BST / 12pm EDT / 9am PDT