鳩山政権の○と× (2010/5/26)
昨年夏の衆議院選で民主党が圧勝し、鳩山政権が発足して9ヶ月になろうとする。これまでに様々な出来事があり、内閣支持率もジリジリと落ちてきた。
これは別に鳩山政権に限ったことではない。政権が変わったときには、当初の期待が大きく、支持率も高いが、実施に政権が走り出せば、当初の期待を裏切る結果も出てくる。米国のオバマ政権とて同じである。この意味では、鳩山政権も支持率の上がり下がりに一喜一憂することはなかろう。
ただし、今回の鳩山首相に対する最大の批判は、沖縄普天間基地の移設問題でつまずいたことにある。自民党政権時代に日米で一度合意に至った基地移転問題を白紙に戻し、新たな代替案で簡単に米国と妥協できると、鳩山首相が当初から本気で考えていたとは思わない。その裏にあったのは、社民党との連立をどう保つかという政治力学からの判断に尽きる。結局、社民党に引っ張られて、問題を散々こじれさせた挙げ句、落ち着いた先は、振り出しの辺野古への移転である。
こうなれば、今更、社民党がハイと納得するはずもない。このあたりの話は、新聞各紙が社説でいやと言うほど書いているので、今更繰り返すことでもなかろう。
これとは別に、郵政問題でも国民新党に引っ張られてしまっている。鳩山首相は、確かに、政権を取る前から小泉内閣が実施した郵政改革を批判していたので、国民新党代表の亀井静香氏との共通基盤はあるが、どう見ても「郵政の再国有化」は完全に亀井氏に引っ張られてしまっている。
普天間基地問題と郵政問題のゴタゴタは、鳩山首相が連立を保つために優柔不断な対応をしたに尽きる。この点で、彼の首相としてのリーダーシップの欠如は×といわれても仕方あるまい。
一方、昨今、批判が目立つ鳩山民主党政権ではあるが、×ばかりではない。民主党政権が進める事業仕分けでは、これまでの自民党政権と官との間のなれ合いでできあがっていた既得権益に大きなメスが入った。事業仕分けの第二弾ででは、官僚の天下り先となっている公益法人が対象となり、結局31法人38事業が「廃止」となった。
時を同じくして、自民党の「『政治主導』の在り方検証・検討プロジェクトチーム」が、5月21日、与党時代の反省を盛り込んだ報告書素案をまとめた。その中で、「「政務三役が自ら責任を持って行うべき与党・政府間の政策調整を、往々にして官僚任せにしてしまうことがあった」という反省の行がある。
官僚に政策立案を丸投げすれば、役人が利権の構築に走るのは、人類がこれまで歩んできた官僚政治の歴史を見てみれば、当たり前に分かることである。
1955年の保守合同以来、営々として続いた政治家と官僚とのもたれ合いの構造が、事業仕分けで一部でも断ち切られたのは○である。