自民党総裁選の行方と世論のズレ (2021/9/14)

 

 

今朝の日経新聞に、こんな見出しの付いた記事があった————「自民党総裁選、組織なお「3割」 党員票は国民の1%」。

 

この見出しを読んだ瞬間、「ん…、自民党総裁選は政党内のリーダーを決める選挙。なんで党員でもない国民が投票する必要があるの?」という疑問が、一瞬、私の頭の中をよぎった。

 

結論を言えば、この見出し少々ミスリーディングであった。記事で言いたかったことは、党員票は世論に左右されやすいが、党員票の行方が世論調査の結果通りになるとは限らない、という内容に過ぎない。別に、総裁選に国民の意向が反映されないことがおかしいと言っているわけではない。

 

ところが、この記事に付いている識者のコメントには、明らかに「ん…」と思うものがあった。

 

学習院大学経済学部教授の鈴木亘氏のコメントである————「国のリーダーを選ぶ選挙であるにもかかわらず、自民党員以外の国民は一切参加できない。しかし、各候補はマスコミに連日登場し、あたかも国民が次のリーダーを選ぶかのような錯覚を抱かせている」。

 

これはどう見てもおかしい。繰り返すが、そもそも自民党の総裁選は党のリーダーを選ぶことが目的である。日本の政治制度は議会制民主主義である。国民が選ぶのは国会議員であり、首相ではない。国会議員選挙を経て、連立を含めて最大の議席を得た政党(与党)が内閣を樹立する。実体として、与党のリーダーが首相を務める。それだけのことである。

 

そもそも総裁選に自民党員以外の国民が一切参加できないのは当たり前。総裁選に参加したければ、自民党員になれば良い。

 

自民党総裁選を「国のリーダーを選ぶ選挙」と言っているが、あくまでも自民党が与党の地位にあることが前提である。常に自民党総裁=国のリーダーではない。20099月から201211月までの民主党政権の3年間、自民党は下野した。

 

もう一つが、「各候補はマスコミに連日登場し、あたかも国民が次のリーダーを選ぶかのような錯覚を抱かせている」というくだり。これも、「錯覚を抱かせている」の主語が「各候補」なのか、「マスコミ」なのか、両者の間で言っている内容は全く異なる。

 

少なくとも、各候補が自らの政策を訴える相手は、選挙権のある現職の自民党議員と党員である。別に、彼らが国民に錯覚を与えるために政策を主張しているものではない。勿論、総裁選のすぐ後に来る衆議院選挙を十分意識しているので、衆議院選で自民党に敗北をもたらすような発言は慎む。それだけの話である。

 

一方、主語が「マスコミ」であれば、総裁選の様子を記事として伝えているに過ぎない。どこのマスコミがどのような形で「錯覚」を抱かせたのか、私は新聞記事でそのような意図を感じたことはない。

 

訳のわからないコメントであった。

 

 

 

 

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