国民年金受給を75歳まで繰り下げ (2014/5/17)

 

 

先週の新聞であったか、田村厚生労働相が国民年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げることを検討するとNHKのテレビ番組で発言したという記事が載っていた。この引き下げは一律というわけではなく選択制であるという。現在でも65歳受給開始を原則として、60歳に繰り上げるか、あるいは70歳まで繰り下げるという選択がある。この繰り下げを75歳まで拡大するという事のようである。

 

政府の本音は支払い時期を引き下げて、財政負担を減らしたいということだろう。厚労省(多分、その中の検討委員会)の説明は、受給開始年齢を引き延ばすことで支給額が上乗せされるので、政府の支払額は結局プラス・マイナス・ゼロとなり、財政負担の低減を意図するものではないという説明をしたようである。が、この話、額面通り取るには相当あやしい。

 

まず、平均寿命を考えてみよう。世界保健機構(WHO)の「2014年版世界保険統計」によれば日本人の平均寿命は84歳(女性が87歳、男性が80歳)とのことである。上述の受給年齢繰り下げと支給額の上乗せがプラス・マイナス・ゼロという話がどのようなモデルで計算したものなのかまったく分からないが、例えば受給者が平均寿命通り84歳で死亡するとすれば、65歳の受給開始年齢を75歳に引き下げるという選択をした場合、65歳ならば19年間受給できるが、75歳からならば9年間しか貰えない。

 

ということは、この方が75歳の受給開始を選択したならば、年間の受給額が2.1倍にならねば元は取れない。さらに、10年受給を先送りした分について、割引率を上乗せしなければ実質価値で等価にならない。割引率を年率2%(日銀のインフレターゲット)としても、単に10年支払いを先送りするだけで22 %分はインフレで実質目減りしている(つまり、今日貰う1万円は10年後に貰う12200円と価値が同じということである)。

 

こんな話をしているから、国民は年金など誰も信用しなくなる(その結果が、国民年金の納付率59%2012年度)という低い数字に表れる。しかもこの数字には支払い免除者が含まれる)。

 

ちなみに、私の妻は昨年60歳となり、60歳から年金を受給するのか、それとも65歳まで更に年金を払い続けて、65歳で受給開始にするかという選択を迫られた。年金機構で詳細な話を聞くと、65歳まで払い続ければ支給額は増額になるが、その額は確か月額千数百円程度という答えであった。あと5年間、年間176000円ほどの保険料を払い続ければ、元を取るためには100歳を超えて生き続けねばならない。はい、言うまでもなく60歳の繰り上げ受給を選択致しました。

 

うまい話には裏がある。くれぐれもご注意を。

 

 

 

 

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