時代遅れの日本的経営 (2023/12/14

 

 

先週名古屋に行った先のホテルで、中日新聞が部屋に届いた。新聞には「MJの本質」と題する三菱重工が開発に失敗したMRJ(三菱リージョナルジェット)の顛末を語る連載記事1/があった。

 

MRJの失敗の原因については、これまでも様々な形で話が出ていたし、三菱飛行機の社長が後に自らの口で語ったものもある。

 

中日新聞の連載記事で面白いと思ったのは、北米の航空機メーカー出身で、後に開発責任者となった(おそらく)米国人の話である。そこには、三菱重工のみならず日本企業の体質と言っても良い核心を突く言葉があった。

 

(開発中にMRJを)飛ばして何かあれば困るから、誰もリスクを取らない。何でも「全員一致」にしようとする。年功序列が徹底していて、上が納得しないと動けないのに、トップは一人では何も決めない。

 

それではいけないと、開発の遅れを取り戻すために判断出来る専門家を傭うことになり、10名ほどの外国人のマネジャ−が加わった。効果はてきめんであったが、ほころびが出るもの早かった。

 

「日本人の管理職は頑固で、マネジャーの助言を聞こうとせず、これまでのやり方を変えることができなかった」

 

結局、三菱重工は1兆円の開発費をドブに捨て、MRJの開発中止を決めた。

 

失われた30年と呼ばれるバブル崩壊後に日本企業が歩んだ衰退の歴史を見れば、そんな事例は多い。

 

1980年代に世界のメモリーチップ製造でトップを走っていたNECの凋落もその代表事例だろう。韓国との市場競争が激しくなるなか、NECは日立製作所との間で半導体部門を合併しNEC日立メモリ(後のエルピーダメモリ)を設立したが、所詮、経営はNECと日立のたすき掛け人事、社員も母体の意向を気にするだけであった。そんな事業運営が上手く行くはずもなく、マーケットシェアで韓国勢に引き離され、経営は傾いていった。最後は経営破綻し、米国のマイクロンに買収されるに至った。

 

マイクロンは買収後、旧エルピーダの広島工場に130億ドルを超える投資2/を行い、経営を立て直した。マイクロンが計画する広島工場での次世代DRAM3/の生産は、政府の「認定特定半導体生産施設整備等計画」に認定され、最大約464.7億円の助成金を受ける4/。経営が変われば、企業がいかに立派に再生できるかを示す恰好の事例だろう。

 

話は少々古いが、かつての日産自動車もそうであった。現場の意向だけで売れもしない車を出し続け、遂に膨大な負債を抱えて実質的に破綻、当時のビッグスリーやダイムラーからも支援を受けられず、最後はルノーに頼るしか生き残る道がなくなった。やり手のカルロス・ゴーンによって経営はV字回復した。もっとも、その後のゴーンのスキャンダルと現状の事業の低迷はご存じのとおりである。

 

日本的な経営の凋落を突き詰めれば、中日新聞の記事にあったように、「年功序列による誰も責任を取らず、何も決められない経営」が根底にあった。

 

終身雇用と年功序列、戦後の高度経済成長の時代には、みんなが仲良く御神輿を担いで頑張れば、事業はそれなりに上手く行ったが、そんな時代は過去の話でしかない。世界の変化は余りにも速く、その変化に対応できないままグズグズしていれば、経営破綻はいとも簡単にやってくる。

 

ICT5/のアマゾン、グーグル、アップル、そして電気自動車のテスラを見ればわかるように、日本には彼らに対抗できるような企業が見当たらない。一方、かつては世界に名をはせた日本企業が、経営革新できないまま、いつの間にか市場から脱落して行った。それは、日本企業の世界ランキングを見れば一目瞭然である。

 

 

 

1/ 中日新聞朝刊(2023127日)

2/ PR TIMES (20221116) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000055229.html

3/  Dynamic Random Access Memory

4/ 経済産業省ウェブ https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/laws/semiconductor/semiconductor_plan.html

5/ Information and Communications Technology

 

 

 

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