五輪新エンブレムの決定 (2016/4/29)

 

 

2020年の東京オリンピックのエンブレムがやっと決まった。前回の作品で盗用疑惑が持ち上がり、スキャンダルまがいの話まで出てきたことが影響したのだろう、ちょっと保守的で無難な作品に決まったような気がしなくもない。

 

新聞には、世の評価は賛否両論で二分されたという記事があった。妥当な反応かなとも思う。林横浜市長は、庁内会議で「あまりのダサさに驚いている」と発言したそうである。もっとも、その後マスコミでこの話が採り上げられ、今度は定例記者会見で、「軽率な言い方だった」と謝罪する羽目となった。でも、市長のその気持ち、分からない訳ではない。

 

市松模様は日本の伝統美であり、それはそれで良い。とりわけ、小物にあしらうには非常に良いアクセントになる。しかし、ポスターのように派手さを求めるとなると、ちょっとパンチが足りない。とくに、海外の人にはそう受け止められるかもしれない。このあたりが意匠設計の難しさだろう。

 

少々話は飛ぶが、1980年代末に日本の自動車メーカーが北米の高級車市場に参入したときの話である。トヨタがレキサスLS400、そして日産がインフィニティQ45を大々的に売り出した。レキサスはドイツ車を真似たと言われても仕方がないようなデザインであった。一方、インフィニティはジャパン・プレミアムを謳い、ラジエターグリルを廃して、七宝焼きのエンブレムを取り付けた。

 

両者の販売結果は言うまでもない。インフィニティは失敗作となった。七宝焼きのエンブレム、確かにセンスは良い、美しい。しかし、小物には合うが、車の顔を作るには地味すぎ、押し出しがなかった。結局、ラジエターグリルのないぬべっとしたインフィニティの顔に、消費者は魅力を感じなかった。次のモデルチェンジで七宝焼きを廃し、ラジエターグリルを取り付けざるを得なかった。

 

市松模様と七宝焼きのエンブレム、そんな昔の話を思い出した次第である。

 

さて、また話を戻して五輪である。前回の五輪と異なり、今回はもはや国威高揚という目的はない。日本も成熟社会となり、老齢化社会でもある。もう、大国を夢見る時代でもない。中規模の国である。市松模様には、派手さはないが、控え目、慎ましやかな美しさはある。今の日本には合っているのかもしれない。

 

 

 

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