石油価格の上昇 (2007/11/15)
原油価格も、いよいよバーレル100ドルの大台に近づきつつある。2001年ころには価格が低迷し、バーレル10ドルそこそこであったことを思い起こせば隔世の感がある。この理由は、中国をはじめとする新興国の旺盛な石油需要の伸びを先取りしたもの、あるいは世界中の有り余った金が石油の先物取引に流れるという投機的な原因によるものと、様々な説明がなされている。本当の原因が何であれ、現状は1970年代の石油危機当時のように石油供給が押さえられ、モノがないために価格が上がるという状況とは明らかに異なっている。いずれにせよ、投機的な動きを含めて様々な思惑が先物という市場を通して、価格を上げていることは事実である。
さて、石油価格の先行きがどうなるかという話はさておいて、このような価格上昇が途上国の経済に大きく影響を及ぼしていることは紛れもない事実である。今回、インドネシア出張の機内で読んだフィナンシャルタイムス(11月14日付)にも、結構そのような記事があふれていた。
インドネシアは、かつては石油輸出国として日本にとっても重要な産油国であったが、現在は正味の輸入国になっており、輸出余力はない。そのような中で、インドネシア政府は国内のエネルギー小売価格を管理し、価格の安定化を図ろうとしている。しかし、最近の石油価格の上昇は急速であり、結果として政府の補助金が膨れあがってきている。11月13日、財務大臣は燃料に対する補助金が60%、電気料金に対する補助金が47%膨らむと発表している。今年の燃料(石油製品)補助金の額は、昨年の55兆ルピア(7200億円)から87兆6000億ルピア(1兆1400億円)に、電気料金補助は同じく29兆4000億ルピア(3800億円)から43兆3000億ルピア(5600億円)に拡大するという。これは政府にとっても膨大な支出であり、これら二つの補助金の額は教育予算をさらに9%上回る。
産油国であるインドネシアがこのような状況にきているというのは、かつては思いもよらなかったことである。
一方、中国でも同様な問題が起きつつある。中国の場合は、食糧の値上げが大きな社会問題になっている。これも同じくフィナンシャルタイムスの記事を引用すれば、消費者物価指数はこの10月が昨年同月に比べて6.5%の上昇であったという。しかし、食料だけを見ると実に17.9%の値上がりであり、野菜が29.9%、卵が14.3%であったという。いかに食料品の値上げが凄まじかったかがわかる。これも何かのニュースで見たが、食用油の安売りに人が殺到して、将棋倒しとなり、死者が出るという騒ぎまで起きている。
ところで石油価格であるが、これは政府が非常に厳しく価格管理をしているようである。この10月に石油製品の値上げを10%まで認めた後は、わずかに1.1%の値上げにとどまっているが、これは別の問題を引き起こした。価格統制を行ったことで製油業界が出荷を押さえ、品不足になってきている。これは当然のことで、政府が末端価格を統制したことにより、業界は高い原油価格を転嫁できなくなり、大きな損失を被り始めたからである。
先進工業国に取って原油価格の値上がりがじりじりと影響し始めていることは確かであるが、途上国にとっての問題の方が明らかに深刻である。