アメフト反則タックル問題と日大のガバナンス (2018/5/22)
ほぼ連日といってもよいほどマスコミを賑わせてきた日大アメフト部の反則タックル問題は、今日開かれた日大選手の記者会見によって、その全体像が概ね明らかになった。日大側の反論が出ていない段階で、これがすべての真実であると断定するのは一方的ではあるものの、記者会見における当人の話し方や態度から見る限り十分説得力はある。
私が一番不思議に思うことは、ここに至るまで日大当局がお粗末と言えるほど、何もしてこなかった点である。大学組織はその運営責任を負う。会社でいえば、現場が起こした不祥事に対して経営が何も対応を取らなかったと同じである。これまでのところ、日大理事会からの発言は何もなく、問題の根源と取り沙汰される内田監督がマスコミに対して煮え切らない態度で弁解をしてきたに過ぎない。つまり、不祥事を起こした現場の責任者が何やら言い訳するだけで、組織としての責任を負う理事会は黙りこくり、対外的なコメントを出してこなかった。確か新聞記事であったと思うが、この反則タックルがマスコミで報道された直後に開かれた理事会でこの問題を議題として採り上る事はなかったという。
会社の経営であれ、大学の運営であれ、組織が説明責任(アカウンタビリティ)と統治力(ガバナンス)を問われるのは今や常識である。また、問題を起こさせない、もし問題が起きてしまったならば、その問題を無用に拡大させないための危機管理もこれまた常識である。この点で今回の日大理事会の対応はお粗末を越えて、ただただ呆れるばかりである。ことを荒立てずに、なあなあにしておけば、人の噂も七十五日とでも思っていたのだろうか。問題を先送りすればするほどその解決が難しくなるというのは、危機管理の上ではイロハのイである。さらに、問題を起こした当事者(内田監督)を正面に出して対応させないことも、これまた組織対応としての常識である。
しかし、日大にはこの危機管理がまったく出来ていなかった。監督は関学を訪れて謝罪したが、その態度は火に油を注ぐようなものであった。常識で考えれば、謝罪の記者会見で相当厳しい質問が出ることは当たり前のように予想できるが、事前の準備をしてきたとは見えない。内田監督はピンクのネクタイをして尊大な態度で質問に答える。その姿を見た世間がどのように反応するか、まったく気にもしていない。すでにあの時点で刑事告発もあり得るという話まで出ていたはずであり、組織としての大学は危機管理の上で監督の言動を謝罪だけにとどめさせなければならない。大学組織として正式な対応を発表していないのであれば、マスコミに対して当事者である監督に勝手な発言をさせるべきではない。広報なり弁護士なりを間に入れて、内田監督の問題発言を事前に制止すべきであった。
反則タックルをした選手が記者会見で明確に「監督とコーチの指示があった」と発言した以上、組織としての責任はもはや逃れられないだろう。この問題は刑事告発にまで発展しており、学内調査でお茶を濁すことは出来なくなってしまった。大学として相当厳しい対応を迫られることになる。