海外のジャーナルの目が見たNHKの存在意義 (2018/1/11)
昨年末、最高裁はNHKの受信料の徴収が違憲ではないと判断した。そんな話題もあって、先週のザ・エコノミストはNHKについて論じている。もちろん、NHKの報道姿勢を賞賛するはずはない。相当辛辣な皮肉である。
そのタイトルや曰く――「多くの日本人は退屈な放送事業者に金を払うことに怒っている。しかし、相撲を見るにはこのチャンネルしかない」。けだし名言。
記事はNHKの事情をよく分析している。とりわけ、なぜNHKが官僚や自民党の政治家に対して及び腰になるのかについて洞察している。
NHK会長は政治任命ではないが、会長を選出する経営委員会のメンバーは国会の同意は得るものの首相任命である。言うまでもないが、首相を担ぐ与党が、国会で同意を拒否するはずはない。つまり、経営委員会の任命で、政府、とりわけ首相の意向が強く働く。
NHKが最悪の事態に陥ったのは、2014年から3年間NHK会長に就任した籾井勝人氏の時代である。ザ・エコノミストが使った言葉を引用すれば、「NHKは権力の広報機関」になった。多くの人の記憶にあるように、籾井氏の失言と暴言は山ほどある。その一つに、記者会見の席で出た竹島問題・尖閣諸島問題の質問に対して、「(NHKの国際放送で)政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と堂々と答えたという出来事があった。
籾井氏がNHKを去ったことで、その当時の経営の酷さはなくなったものの、NHKがマスメディアとして国民から評価されるにはほど遠い。その根底には、NHKが戦後長期に亘って続いた自民党政府との間で持ちつ持たれつ、お互いに心地よい関係を築いて来たことがある。端的に言えば、NHKは自民党政府にすり寄ることで、受信料の徴収を法的に担保させることに成功した。
ただし、そのつけも大きかった、国に対して批判的とも取れる内容の番組、それを作った職員、あるいは政府の意向に沿わないキャスターが番組から退けられていったことは、NHK以外のメディアが報道したとおりである。
このあたりの政治とのしがらみに縛られるNHKの事情は、英国の公共放送BBCとは雲泥の差となって表れている。
NHKも悪評高い「集金人」を動員したお陰で、今や80%の受信料徴収率を確保するに至った。しかし、依然として、NHKなど見ないのだから金を払いたくないという人は多い。
ザ・エコノミストは、「受信料を拒否する人達を説得できないのならば、受信料を強制するよりも、もっと面白い内容の番組を作ったらどうだ」と提言する。ごもっともである。