国際放送には到底及ばないNHK海外向け放送番組 (2009.6.3

 

今回、ザンビアに一カ月ほど滞在しており、ホテルのテレビチャネルを回してみたら、NHKの海外放送が入っている。その昔、どこかの国でNHK海外放送を見たときの印象を思い起こすと、何かがちょっと違う。今回は全て英語放送であり、日本語が全く消えているではないか。

 

そういえば、政府に言われて、NHKBBCの向こうを張って、日本人以外に海外で広く視聴者を確保しようという方針を決めた、とのニュースを聞いた覚えがある。その方針に従って、この様な全て英語という番組編成にしたのだろうか。

 

しかし、番組の編成は恐ろしく安直である。まずは、国際放送の体裁を整えようというわけであろうか、天気予報は、まさにビジネスウーマンといういでたちの女性が、全面に広がる天気図を背景に、立て板に水と各地の天気を説明していく。おい、ちょっと待てよ、このスタイルはCNNの天気予報のまったくのパクリではないか。

 

しかも、天気図の説明は日本と周りの東アジア諸国である。今、この放送を見ている人は、アフリカにいますよ。CNNをパクるならば、徹底的にパクって欲しい。CNNであれば最初にアフリカの天気を説明し、次に北に上がって欧州、そしてアジア、大洋州、北米、南米と移っていく。あくまでも、その地域の視聴者が主体である。

 

次に、ニュース。昔のように日本のNHKニュースをそのまま流すのでない点は、多少進歩したようである。東京をキーにして、中国とタイの都市を繋ぐ三次元中継の形で、それぞれの国のアナウンサーがその地域のニュースを提供する。でも、これもやはりCNNのパクリである。天気予報と同じで、各国との多次元中継をやるならば、ここはアフリカなのだから、南アフリカ、ケニヤ、コンゴくらいを拠点にニュースを流すべきでしょうに。そもそも、ザンビア人が東京、バンコク、北京のニュースを見るために、高い衛星放送に大枚を投じるとは到底思えない。常識的に考えれば、彼らにとっては、南アフリカの経済情勢、ジンバブエのムガベ大統領を巡る政治混乱の方がもっと重要である。

 

そして最後に、その他の番組。全て日本をテーマにした内容である。たまたま、老人介護問題を英語で流しているが、アフリカの人々にとって日本の老人介護問題が一体どうだというのだろうか。あいた口がふさがらない。

 

国際放送と気負ったものだから、英語放送にしたが、中身は完全に海外在住の日本人向けである。それならば、日本語で番組を流せばよいであろうに。結局は、英語版にしたところで、日本人以外が見たいと思う番組内容では全くないし、半面、日本人にしてみれば、日本語抜きの英語だけのNHK放送に何の意味があるというのだ。英語ならば、本物のBBCCNNの方がよっぽど面白い。

 

政府の金を含めて莫大な金を使って、このような放送を流すならば、もう少しやり方を考えた方がよい、と思うのは私だけではあるまい。少なくとも、BBCCNNのモノマネだけは絶対にやめた方がよい。これでは、上海の自動車ショーで、トヨタや欧州の高級車メーカーのコピー車を出品し、堂々と「うちの車は立派なオリジナルである。どこも似ていない」と抗弁した中国メーカーの社長を笑えないではないか。

 

 

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