叩かれ、揉みくちゃの Go To キャンペーン (2020/12/16)
新型コロナウイルス感染者が10月下旬から急増し、夏の第二波に続く第三波となった。先ほど入ったニュースによれば、東京都で新たに678人の感染を確認し、過去最多を記録したという。
11月に入り、政府は国民に向けて感染予防を強く訴え続ける一方、夏から力を入れてきたGo Toキャンペーンについては特に制限を掛けなかった。これに対して、マスコミはこぞってキャンペーンの中止を訴え、政府の対応を非難した。
確かに、感染予防の最大の対策として人との接触を避けることしかない中で、旅行で人の移動を促進させるのはどうなのだろうという疑問はある。しかし、マスコミが騒いだように「Go To」が感染拡大を引き起こしているが如く騒ぐことが的を射ているとも思えない。
現在の状況を見ればわかるように、感染者が多いのは首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、大阪、愛知である。つまり、経済活動の中心となる大都市である。今の感染増大の最大の原因が、経済活動が元に戻って人が集まっていること、かつ感染に対する慣れが起きていることであると考えるのが道理であろう。
ちょっと古いが、東京都内に移動する人は一日あたり291万人であり、その9割が神奈川、千葉、埼玉からの流入である(NHK NEWS WEB 2020年3月27日)。一方、「Go To」で移動する人の数はと言えば、首都圏で一日あたり移動する291万人に比べれば一桁小さい(観光庁の発表では7月22日から11月15日までの利用者数は5260万人。つまり一日あたりで見れば43万人強である)。さらに、「Go Toトラベル」で訪れる先は温泉や観光地の筈であるが、そこで大きな感染クラスターが頻発したという話は聞かない。
政府が「Go To」で頑なになった事情として、観光業関連の従事者数はかなりの数に上り、彼らが今置かれている状況が極めて深刻という問題がある。昨年8月の総務省のサービス産業動向調査速報によれば、宿泊業、飲食店、娯楽業、そして道路旅客運送業の従事者数を足し合わせると653万人ほどである。問題は、これらの産業の多くが零細な事業者によって支えられていることにある。半年どころか、数か月も客足が止まれば、資金繰りが付かなくなり廃業に追い込まれるところは多い。
そんな観光業の窮状ゆえに、政府も「Go To」の中止をなかなか決められなかったのだろう。
しかしここに来て、政府はついにマスコミと世論の声に押された形で、年末28日から年明け11日までの間Go Toキャンペーンの中止を決めた。
この件で政府の対応がまずかったことは否定しないが、マスコミも大都市圏での感染者拡大防止策について、もう少し踏み込んだ議論を打ち出せなかったのだろうかと、私はつくづく思っている。一番の対策は東京や大阪での人出を抑える事である。その具体策、それに伴う経済的な損失、被害を被る事業者への支援とそのための費用・財源、さらには医療関係者の負担軽減のバランスをどう取るのか、そんな議論を取り上げたマスコミからの話を、私は寡聞にして知らない。