韓国 戒厳令の発令 (2024/12/5)

 

 

韓国の尹大統領が戒厳令を発令したという昨日のニュースは驚きであった。戒厳令と言えば、私が韓国で仕事をしていた50年ほど前は、朴大統領政権下で夜間外出が禁止されていた。そんなかつての韓国の姿を思い出した。

 

しかし韓国は1980年に起きた光州事件を経て軍政を倒し、民主主義が根付いた。今やアジアでも代表的な民主国家の一つである。

 

今回の出来事は、新聞を読む限り、多数議席を握る野党の妨害で国会運営が行き詰まったことが発端という。

 

尹大統領は、20225月の就任以来、議会運営で野党と対立し続け、ほとんど妥協点が見いだせないまま今日に至った。非常戒厳宣言の要旨をかいつまめば、国会がこれまでに検事や政府官僚に対する弾劾を乱発し、かつ国会審議で予算までも政争の手段として利用したことが理由という1/

 

彼がなぜこのような暴挙に走ったのであろうか。その原因は色々と取り沙汰されている。彼はそもそも政治家ではなく法曹界の出身(検察官)で、善か悪かの二者択一で物事を判断しようとする人物だという説明は分かり易い。政治とは、賛成あり、反対ありの中で妥協点を探るものである。己の信ずる善悪をはっきり分けようとすれば、政治は立ち往生してしまう。

 

彼は戒厳令という大きな賭に出れば、その思いを国民が理解してくれると思ったのだろうが、その可能性がほとんど無いという冷静な判断ができなかった。それが彼の政治家としての能力の限界だったのだろう。

 

野党は弾劾訴追案をすでに提出している。与党から離反者が出れば可決の可能性はある。例え否決されても、尹政権の残りの2年強は死に体となり、韓国の政治は不安定なまま混乱を続ける。

 

そんな中、今朝の新聞に、フランスの国民議会(下院)が4日、バルニエ内閣の不信任決議案を賛成多数で可決し、内閣は総辞職するとの報道があった2/。先月には、ドイツで財政政策の対立により自由民主党(FDP)が連立政権から離脱し、ショルツ政権は連邦議会での過半数を失うという騒動があったばかりである。政治の混乱は欧州も同じ。そして、あれだけの刑事訴追と民事裁判を抱えながらも大統領選に返り咲いたトランプも、来年からの次期4年間に様々な問題を引き起こすのだろう。今や民主主義国家は、洋の東西を問わず政治の混乱に直面している。

 

民主主義とは、他の政治体制、端的にロシアや中国のような権威主義国家に比べればましな仕組みではあるが、手間も、時間も、そして費用も掛かり、決して全てが理想道理に機能するものではない。安易な道ではなく、何ら苦労もなく維持できるわけでもない。

 

 

 

1/     日本経済新聞電子版(2024/12/4

2/     日本経済新聞電子版(2024/12/5

 

 

 

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