12年ぶりのマッキントッシュ 2008.5.13

 

通称、マック。今ではフルネームで呼ぶ人はほとんどいない。かつては、日本では10%を超えるシェアを取った時代もあったが(私のあやふやな記憶では、20%近い時期があったと思う)、今では数%しかなかろう。

 

私が仕事でパソコンを始めて買ったのは、1985年にキヤノン販売が発売したダイナマックであった。その当時のパソコンはまさにDOSの世界。仕事の小道具として使うには少々手間のかかる代物であり、買うにはちょっとためらいがあった。ところが、マウスを使って、アイコンをいじることでアプリケーションが動くというマックの概念は、私のパソコンに対する固定観念を吹き飛ばした。迷いもなくダイナマックを買ったが、当時のバンドルセット、マックとプリンターの組み合わせでその価格はほぼ100万円という、当時のベストセラーであったNEC9800シリーズに比べて二倍はする値段であったと記憶している。しかし、それでもマックの先進性は他のパソコンを凌駕していた。

 

しかし、1980年代後半から90年代の前半に掛けて、マックの事業戦略が全て裏目に出たことで、倒産まで噂されるようになったアップルの歴史については、皆様ご存じのとおりである。私もその間、ダイナマックから数えて4台ほどのマックを乗り継いだのだろうか。しかし、1990年半ばには、ウインドウズ95が出たことで、他のPCもマックもどきになってしまい、マックはオフィスからほとんど淘汰されてしまった。かく言う私も、その頃、会社がウインドウズにシステムを統一したことがきっかけで、マックを捨ててしまった。

 

その後はIBMを使い続けたが、今回たまたま新しく買い換えたシンクパッド(もはやIBMではなく、レノボである)のOSの調子が悪く、結局、返品するという出来事があった。出張が重なっていたことで、急ぎ代替品が必要となり、他のメーカーの機種を探していたところ、あのマックが今ではマックOSとウインドウズの両刀使いになっているではないか。

 

試しにマックブック・エアーを購入し、ブートキャンプ(マックOSとウインドウズとの切り替え)を使ってウインドウズを走らせてみたが、何ら問題はない。難をいえば、キーボードの配列が違うこと、本体に右クリック・ボタンがないことで、作業上、ちょっと戸惑うことがあるが、基本的には慣れの問題でしかない(ちなみにタッチバッドの使い方により、右クリックの機能を持たせている)。

 

マックOS自体の印象は、明らかにウインドウズ・ビスタより使いやすいし、使って楽しい。12年前のマックの思い出が沸々とわいてくる。サラリーマンをやめ、独立したコンサルタントの身である私には、社内のシステム環境に縛られる必要もない。思い切ってこれまでのIBMをマックに置き換えていくことにした。

 

PDA(昔のパームトップやソニーのクリエ)が市場から消えてしまい、不自由していたが、マックならばiPodと同期することでスケジューラ、Eメール、ちょっとしたウェッブの検索も可能である。このあたりの商品戦略はソニーを歯牙にもかけない。私にとってのiPodは単に音楽を聴く道具ではない。パソコンの一部になっている。

 

ふと思い出してみればアップルの歴史は、一度は経営から放逐されたスティーブ・ジョブズの葛藤の歴史であったのかも知れない。アップルを単なるパソコン・メーカーではなく、音楽配信、画像処理、パソコン、端末機器をITとして融合させ、それをまとめ上げるという事業戦略に変えることで、経営を見事に再生させた。私には、個人的にジョブズを人間として尊敬できないところもあるが、経営能力は卓越している(このあたりの話は彼の自叙伝「iCon」を読んでみると面白い。訳本もあります)。

 

 

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