石油価格の下落 (2016/1/26)
街道沿いのガソリンスタンドの価格表示を見れば、レギュラーガソリンがリッター100円を切って、90円台を提示するところも珍しくない。ここまでガソリン価格が下がったのは、何年ぶりだろうか。
ほんの2年前にバーレル100ドルを軽く超えていた原油価格は、この1月にはWTIがバーレル20ドル台に落ち込んでいる。消費国としては有り難い限りであるが、産油国の懐具合は相当大変である。
税収の七割を石油産業に依存するナイジェリアでは、大統領が国庫が空っぽになったと発言した。あのお金持ちのサウジアラビアですら、昨年の財政赤字はGDPの15%に達したという。クリミア問題で西側から経済制裁を受けているロシアは、ただでさえ台所事情が苦しい上に、この原油価格の下落により、財政支出をさらに10%削減すると発表している。中南米の産油国の状況はもっと深刻である。放漫な財政政策を続けてきたベネズエラは、IMFによれば、昨年のGDPは10%縮小、今年のインフレ率は実に200%を超えると見られる。
しかし、当面石油価格が下がる気配はない。OPEC最大の生産量を誇るサウジアラビアは、財政赤字も相まって生産量を下げるつもりはない。財政難に喘ぐロシアとて同じである。さらに、経済制裁が解除されたイランの原油が市場に出回ることで、石油は益々だぶつくことになる。
世界の経済は繋がっているので、ほとんど石油価格の崩壊に近い今の状況は、先進国にとっても決して良い話というわけではない。現に、日本の株価も1月に入って急速に下がっている。石油価格の下落で、石油関連産業の投資に急速にブレーキが掛かり、経済の見通しに暗雲が出てきている。とりわけ、アメリカのように巨大な石油産業が投資を控え、人員整理を始めれば、経済への影響は極めて大きい。当然、アメリカの株安は世界の株価にも影響する。
石油価格が暴落したからといって、当面、石油生産量が下がる可能性は殆どない。一方、この安い石油価格が世界経済を押し上げるわけでもない。
過去の石油価格の推移を見ればそれが分かる。上がりすぎた石油価格はどこかで価格の崩壊に繋がり、それが産油国の経済を混乱させる。そして下落した石油価格が底を打ち、今度は価格の高騰に向かうと消費国の経済を混乱させる。まさにその繰り返しであった。
とはいうものの、この1年、2年、石油価格は下がったままだろう。