トランプ大統領来日騒動から1週間 (2019/5/31)
先週末のトランプ大統領の来日は結構な騒ぎとなった。
初日は、千葉でのゴルフ、千秋楽での大統領盃の授与、そして六本木での夕食と、盛りだくさんのおもてなしと相成った。これについては、海外のメディアも含めていろいろな見方が出た。
言わずもがな、日頃より自民党政治と安倍首相に批判的な筋からは、アメリカ追従、トランプ氏をもてなす過剰な演出、と想定できそうな批判はもちろん出てきた。一方、海外のメディアも、ワシントン・ポストは「日本での最初の1日を観光客として過ごした」という皮肉を伝えたようである。
今回の大統領の訪日、政治批判や嫌みを含めていろいろな意見はあったものの、結果として、私はまあまあ上出来だったのではないかと思う。日本も米国も、外交、経済、軍事を含めてすべて一枚岩であるはずもないし、お互いの利害が噛み合わないところが出るのは当たり前の話である。
今回の訪日の目的は、令和(新天皇)初めての国賓として迎えられた行事への出席である。もちろん首相との会談はあったが、それが第一の公式目的ではない。当初から会談の合意文の発表は出ないことになっていた。
日米貿易問題では、トランプ氏と安倍首相の間で発言に違いが出たが、まだ落とし所は決まっていないので、これは当たり前の話である。また、トランプ氏が結論を7月の参議院選挙後に先送りすると発言したことについて、幾つかのメディアは安倍首相に対する貸しを作ったと解釈したようであるが、そう取るのはどうかなと思う。
トランプ氏にとって今の安倍首相は、敵対的ではないという意味で話しやすい相手である。
もちろん、安倍首相がトランプ氏の言うことをすべて聞いてくれるわけではない。であれば、7月の参議院選挙で安倍首相の地位を危うくして、その後面倒な政治状況をわざわざ作り出すような真似はしたくない。その方が、選挙後に日本政府と取引を進める上で、不安要因が解消できる。至極合理的な判断である。
貿易問題で、日本人の多くは、トランプ氏が口にする自動車関税の25%への引き上げを、とんでもない不合理な話だと思っている。
しかし、米国にしてみれば牛肉にかかる関税38.5%や米の関税341円/kg(農水省は国際相場に対して税率280%との見解)はむちゃくちゃな話である。
日本は食糧安全保障をその理由にしているが、要は農業従事者の保護でしかない。食料安全保障と言ったところで、和牛は米国から輸入する飼料で飼育され、日本人の食料を国産米で賄うとしても、江戸時代当時の人口3000万人を養うのが限度である。
膠着してしまった北朝鮮問題、米中の貿易摩擦の日本への波及、中東・イラン情勢など、政府が抱える問題は山積している。
そんな中で、外交の軸足をどこに置くかと言えば、やはり米国にならざるを得ない。少なくもと、両国が民主主義という基本的な価値観を共有している事は事実であり、日本にとって同じく重要な隣国の中国とはこの点で全く噛み合わない。これは、例えトランプ氏が民主主義を語る上で問題が多々あるとしても、である。