衆議院選挙 (2017/9/30)
野党は大義のない選挙と言って非難しているが、そうでもない。
そもそも、安倍首相にしてみれば、自身は森友学園と加計学園問題というスキャンダルを抱え、自民党は都議選で完璧に叩きのめされてしまった。
そうなれば、ポスト安倍を巡り党内にいろいろと雑音が出て来るのも致し方ない。来年12月の選挙まで圧倒的なリーダーシップをもって党を引っ張れるわけではなくなっている。一方、野党を見れば民進党はほとんど崩壊寸前である。
一時、安倍政権の支持率は急落したものの、ここにきて少し持ち直しの兆しが見える。となれば、首相が今ここで衆議院を解散し、選挙に打って出ることで、自民党内での自らの足場を固めようというのは至極当然の話である。そして、彼が解散を決めた時点でおよそ目論見道理に事は進むだろうと考えたのも、ごもっともである。
しかし政治の世界、一瞬先は闇。民進党の前原代表は民進党を解党し、小池都知事の率いる希望の党に合流するという大勝負に出た。小沢氏の自由党も同様な判断を決め、維新の会は希望の党と間で候補者の調整を行うという。小池都知事が新党を立ち上げるという話が出た時点では、それがどの程度のものかという懐疑論もあったが、まさか民進党が合流とは思いもよらぬ展開になった。
まさに青天の霹靂である。なにせ、解散時点では、凋落を辿る民進党が取り得る選択肢は他の野党との連携を模索するくらいで、大した対向勢力とは見えなかった。
民進党が希望の党に合流することで反自民勢力が侮れなくなったことは間違いない。これで与野党が逆転するとは思わないが、自民党が少なくない数で議席を減らすことはあり得るお話である。
英国のテリーザ・メイ首相が今年の4月に議会を解散した時の判断を思い出す。
キャメロン首相がEU離脱の国民投票に打って出て、思いもよらずそれが実現してしまった結果、保守党がその後始末のために担ぎ出した人物がテリーザ・メイである。決して、党内で確固たる地位を持っているわけではなかった。
彼女には、EUからの強硬離脱(Hard Brexit)を実現するために、盤石な地位を確保する必要があった。一方、野党勢力を見れば、労働党首は不人気のジェレミー・コービンであり、メイ首相が負けるはずはないと判断しても無理はなかった。が、選挙結果は労働党が30議席を増やし、保守党は単独過半数割れとなってしまった。
やはり政治の世界、一瞬先は闇である。安倍首相がメイ首相の轍を踏むことになるのかどうかは分からないが、今回の衆議院選の結果は楽しみである。