『古代日本の官僚――天皇に仕えた怠惰な面々』 虎尾達哉 2021年4月 中央公論社
自らの気質を真面目であると思っている日本人であるが、古代の日本人の姿はそうではなかった。規律はユルーく、律令制度の下で宮仕えする役人達は相当いい加減な働き方をしていた、というお話しである。
宮中の役人は適当に仕事をサボり、儀式への無断欠席は当たり前。それを取り締まる方も、温情的、半ば諦めており、点呼の際に代返で誤魔化してその場を繕う、というユルさであった。
律令制度という形は中国から輸入したが、儒教的な倫理観は未だ日本にはない。加えて朝廷による政治体制の確立は道半ば。急ごしらえで役人の数を増やせば、質の担保など叶うはずもない。
そんなわけで、働く方もユルければ、それを管理する方もユルーく、いい加減に事を済ます。もっとも、これは古代に限った話でもなかろう。現代の組織でも結構耳にする。
管理する側のお偉いさんも、組織の目が届かなくなれば、悪いことをする。しかしご当人は、悪事とはつゆほども思っていない――これを役得と呼ぶ。地方に下った国司の誤魔化しや悪事は、枚挙にいとまが無い。
そんなユルーい、ユルーい律令に基づく朝廷政治であったがゆえに、やがて国の統治は乱れ、必然的に武士の台頭に繋がっていったのだろうか。高校の日本史では習わなかった歴史の一面である。