殺戮の荒野 –killing field (2013/11/24)

 

 

カンボジアを語る上で、ポルポトによる大量虐殺の歴史を避けることはできない。僅か35年ほど前に起きた出来事である。1976年から1979年の3年ほどの間に、300万人の国民が同じ国民の手によって殺されたのだ。しかも、そのきっかけが、原始共産制を確立するためには、既存社会の知識人、政治家、官吏、宗教人、そして富や名声を持っていた者達はじゃまだ、というだけのことである。決して人種的、文化的、歴史的な根深い争いがあったわけではない。クメールルージュの兵隊は、良心の呵責もなければ、哀れみの情もなく、4人に1人の国民を抹殺していった。

 

クメールルージュの特徴は、一部のリーダー達はそれなりの教育を受けた熱狂的、いや狂信的な共産主義者であったが、その下にいた兵の多くは満足な教育を受ける機会すらなかった人間であり、リーダー達の命令をそのまま受け入れることが本分であり正しいことと信じていた、というよりも信じ込まされていた。最小限の倫理観、多様な価値観、お互いの尊重といった、人としての思考回路がまったく欠落した組織であった。

 

これを異常な時代ということは容易いが、類似した社会行動は他に幾らでもあげられる。毛沢東末期の文化大革命、スターリン時代の粛正、日本でいえば大政翼賛会の成立と国家統制、まさに狂気のなかで、人々が唯々破滅に向かって突き進んでいく世界である。しかも、ほとんどの人は、それを異常とすら感じなかった。

 

今の世界でも、同じようなことが起きかけている。日本人の目から見れば、昨年の尖閣諸島国有化をきっかけに中国国内で起きた日本企業を対象にした暴動騒ぎは正気の沙汰ではないが、その一方で、日本国内を見れば、在日韓国人・朝鮮人を対象としたヘイトスピーチのデモもじつは同根である。気に入らない相手であれば、社会から葬り去ってやろうという衝動である。

 

 

l  犠牲者のお骨を納めた慰霊塔

l  殺害した後の死体を埋めた穴

l  遺骨を収集した当時の写真

l  収集した犠牲者の遺骨

 

 

 

 

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