菅首相「脱原発」発言の波紋 (2011/7/17)

 

 

菅首相の「脱原発」発言が物議をかもしているが、私は、それなりにまっとうな考え方だと思っている。

 

政治的手続きという点では、閣僚間での合意もなく、民主党内での議論もないまま、彼一人で突っ走ってしまったことは事実である。発言の二日後には、菅さん自信が「個人的な発言」であったと述べている。それがゆえに、政治の場では、またもや菅たたきの切っ掛けを作ってしまった。

 

菅さんは、市民運動の出身であり、確かに思いをすぐに行動に移す所があるが、それほどデタラメをやっているとは思わない。彼の思いは、大方の国民が今感じていることと共通する。それに、彼は、今すぐ原発を止めろ、廃止しろと言っているわけではなく、「将来は原発のない社会を実現する」という基本的な方向性を述べたものである。例え、支持率は下がっていようが、現在の日本の首相は菅さんなのだから、彼が基本的な方向性を示すことは、それ自体問題ではない。

 

一方、自民党の谷垣総裁、石原幹事長、公明党の山口代表は、菅さんのこの発言を延命のためのパフォーマンスであると、激しく非難している。それでは、自民党あるいは公明党はこの原発問題をどう考えるのか、自分たちの基本方向を明確にするべきである。やれ、「卒原発」だ、「縮原発」だ、「超原発」だ、などと造語を並べ立てているが、問題を曖昧にしたまま、やめるでもない、やめないでもない、どちらの意見にも迎合するような歯切れの悪い対応である。

 

今動いている原発を即停止して、電力供給が確保できるわけでないことは、皆が分かっている。菅さんを含めて、本日をもって全ての原発を廃止などとはだれも言っていない。長期的に、新規の原発を建設し続けるのか、あるいは、既存の原発が耐用年数を過ぎた段階で順次廃炉にして、電源に占める原子力のシェアを下げていくのか、そのための時間軸をどれだけ取るのか、代替すべき電源として何を使うのかといった具体論は、実務段階で議論していけばよい話である。

 

経団連の米倉会長や経済同友会の長谷川代表幹事も、産業界の立場から菅首相の発言を非難している。その裏にあるのは、電力供給が不安になれば、日本の製造業の海外移転がさらに加速するというものであろう。原発をなくせば、日本の経済と産業を危うくすると言いたいのだろう。私は、日本の経済を維持発展するために原発を推進すべきと言うのならば、それはそれでよいと思う。ただし、それには、国民の多数の支持が必要であり、かつ原発のリスクをこれまでのように過疎地に押しつけるのではなく、電力を消費する東京圏、関西圏に立地するだけの腹があるのか、明確にすべきであろう。まさか、経団連が、福島県が今後も原発を受け入れてくれるなどと、ゆめゆめ考えてはいないと思うが。

 

 

 

 

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