『鴨川ランナー』 グレゴリー・ケズジャナット 202111月 講談社

 

 

この本、二つの小説から成る。前者が題名どおり『鴨川ランナー』、後者は『異言』。ちなみに、鴨川ランナーは2021年に第2回京都文学賞を受賞している。

 

作者は日本(語)に関心を持ったことで来日し、日本で大学院に入り博士課程を修了した。現在、日本の大学で准教授を務める。『鴨川ランナー』は彼のそんな半生を題材にした作品なのだろう。

 

日本というある意味閉鎖的な社会環境ゆえに、とりわけ言葉が壁となった「日本人」と「ガイジン」という疎外感は、多くの外国人が身体で感じるところだろう。日本で生活する日々の楽しさはあるが、その一方、時々感じる居心地の悪さも経験する。第二人称で語り継がれるお話しには、アメリカからやって来た若者のそんなちょっと複雑な心境が描かれている。

 

私の周りにも、何となく日本に憧れて来日し、そのまま住み着いた人がいる。彼らは、若き頃、日本文化、仏教、絵画に関心を持ち、あるいは日本での布教のために来日したことで、日本人と結婚し、そのまま永住した。それとは対照的な人達も結構いる。いやその方が多いかも知れない。若者の冒険心で何となく日本に流れて来て、取りあえず英語学校の先生になれば食い扶持は稼げるので、気儘に日本で生活すると言う人達である。彼らの場合、長期に亘って日本にとどまることは余り多くない。

 

二編目の『異言』の主人公は、どちらかと言えば後者のグループに属する。英語学校の教師で日々の生活を賄っていたが、いきなり学校が倒産し、住むところを含め明日からの生活に困窮する。困った挙げ句に、教え子であった女性のマンションに転がり込み、同棲生活を送る。仕事探しをするうちに、ひょんなことから見つけた結婚式場のにわか神父の仕事にありつくというお話しである。

 

 私はにわか神父までは知らないが、この手の話は結構ある。

 

 

 

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