カブール陥落
(2021/8/16)
米軍がアフガニスタンから完全撤退してほぼ1ヵ月でカブールはタリバンの手に落ち、ガニ大統領とその側近は国外に逃げ出した。これほど早い政府の崩壊はバイデン大統領にとって想定外の出来事である。
今日のCNNのウェブニュースを見ると、アフガンの出来事がトップニュースである。そこには、米国にとっての様々な問題が浮き上がってくる。
米国大使館のカブールからの撤退は1975年のサイゴン陥落を彷彿とさせる。9/11テロ以降、20年間に亘って1兆ドル(110兆円)の戦費を投入し、数千人の戦死者を出すという多大な犠牲を払いながら、全てが瓦解し、元の木阿弥となった。
参戦した兵士にとっては、あの戦いとそこで命を落とした犠牲者は一体何だったのだろうか、という思いがこみ上げてくるだろう。
米軍撤退後、政府軍がいとも簡単に崩壊した理由には、幾つかのものが挙げられる。兵士の経験が浅く、タリバンの兵士に比べ未熟であったと言うが、その裏には、政府の腐敗、給料の未払などの問題があり、兵隊の士気はまったく無かった。政府に対する民衆の支持が弱く、地方の部族の長老達はタリバンに従ったと伝えられる。
CNNが配信する動画には、国外に逃れようとする人々がカブール空港でひしめき合う様子が映されている。その多くは、恐らく米軍に協力した人達とその家族なのだろう。このままカブールにとどまれば、殺されることを覚悟しなければならない。
過去2週間に2000名のアフガニスタン人が特別ビザを取って既に米国に退避したが、難民の数はそれだけで済むはずはない。国連人道問題調整事務所(UN OCHA)は、タリバンが全土を掌握したことで55万人を超える難民が既に発生したと発表している。【CNN, August 15, 2021, Afghanistan-Taliban news】
民主主義先進国家が理念と考える社会形態を押し付けても、それが世界中全ての国で旨く機能するわけでないことは、これまで何度となく経験した。それはイラン、イラク、リビア、シリアといった回教徒圏にとどまらない。ロシア、ベラルーシ、そしてアジアで言えば香港やミャンマーでも今まさに起きている。