トランプ大統領のエルサレム首都認定宣言(2017/12/11

 

 

 トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定すると宣言したのが先週の水曜日、126日であった。当然のごとく、EU各国や国連事務総長から非難の声が上がり、これまた当然のごとく、パレスチナ自治区やイスラム圏では米国に対する抗議デモが行われた。イスラエルではパレスチナ人によるイスラエル人に対する殺傷事件が発生したと伝えられている。

 

 エルサレム問題はさまざまな知恵の上で微妙なバランスを保ってきた。

 

 1949年にイスラエルはエルサレムに首都を移転したが、国際社会はそれを認めなかった。国連によりエルサレムはどこの国にも属さない(イスラエル人の領土でもアラブ人の領土でもない)国際都市との認識が成立した。

 

その後1967年までは、西側をイスラエルが、東側をヨルダンが管理していたが、六日戦争の結果、東側もイスラエルの管理下に入った。この点で、エルサレムがイスラエルによって実効支配されていることは事実である。かつ、イスラエルは国防省を除く各省庁を西エルサレムに置いている。それでも、各国は大使館をテルアビブに起き続けている。

 

 一方、イスラエルがエルサレムを首都と位置づけるように、パレスチナ人も東エルサレムに首都を置くことを主張し続けている。この歴史的な事実は歴然として存在する。少なくとも、1993年のオスロ合意でパレスチナとイスラエルは和平合意に向けて話し合うことを約束し、エルサレムの取り扱いはその中で解決することが決まっている。

 

 トランプ大統領はそれをあえてぶち壊しにした。

 

米国では、議会が米国大使館のエルサレムへの移転(1995年エルサレム大使館法)を求め続けてきたが、歴代の大統領はその執行を引き延ばしてきた。米国がパレスチナ問題への平和的解決に向けて主導的な仲介者になるというならば当然の行動である。現在の関係者の間で解決できない問題であれば、それは後々の人々の知恵に任せる。それが政治的な賢さというものである。

 

 トランプ大統領にはそのような知恵はどうでもよかった。彼の頭の中にあるのは、大統領就任以降一年にもなろうというのに、全く公約が果たせていない現状を打破したいという内向きな動機しかない。(オバマケアの廃止に失敗し、メキシコ国境での壁造りも進んでいない。そしてイスラム教国家からの入国禁止措置も司法判断で邪魔されている)。

 

 ツイッターで訳のわからない雑言を言っているうちは未だ可愛げもあるが、今回の宣言は国際情勢で新たな火だね作ることになりかねない。困った人である。

 

 そう、こんな笑い話を思い出した。中国人に民主化を弾圧する習近平の政治支配をどう思うかと聞いたら、「米国だってトランプを大統領に選んだだろ。それよりはマシだ」と答えたという。

 

 

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