景気は回復基調にあるのか (2014/11/26)
安倍総理は衆議院を解散し、12月の選挙と相成った。新聞を見れば、何のための選挙か、財政の逼迫する中で800億円もの選挙費用は無駄ではないかといった話ばかりである。しかし、選挙とは各政党にとっての戦いの場である。党利党略は当たり前、安倍総理にしてみれば、就任以来2年を過ぎたこの時期で、さらに足場を固めたいと考えるのは当然のことである。それが政治である。
さて、選挙戦についての「うんちく」は新聞にお任せするとして、選挙の議論の焦点はアベノミクスの効果が出ているのか、それとも出ていないのか、という話になるのだろう。それでは、ちょっと経済データを眺めてみよう。よく失われた20年(正確にはもう24年になるが)と言われるが、少々長すぎるので2001年以降の経済成長がどうであったかを見ることにする。
2008年のリーマンショックによる世界同時不況と2011年の東日本大震災の時の落ち込みを除けば、日本は実質で見ればおしなべて経済は成長している(図1参照)。ただ問題はデフレである。何せ過去13年間を見ても、物価は下がり続けて来た。2013年の物価は2001年に比べて実に17%も下がったのである(図2参照)。
その結果、名目のGDPはリーマンショックまでそれほど増えないまま、2008年から2009年にかけての世界同時不況でドスンと落ち込んだ(図1参照)。
では、2012年からの安倍政権下で経済は上向いたのかという話になる。同時に、2009年9月から2011年12月までの民主党政権下で、経済はどうであったかという比較にもなりそうであるが、なにせ、世界同時不況と東日本大震災という二つの不測の事態のまっただ中にあった訳だから、この間の経済の落ち込みを民主党の責任にするにはちと酷である。
話を戻して、安倍政権下の2年間(2012 〜2013年)、確かに経済は回復している。実質DGPで見れば小泉政権当時の勢いはある。しかし、消費税の増税が短期的にはマイナスに効いてしまった。世の中の予想とは異なり、この7月〜9月の第3四半期の成長率は年率で▼1.6%(速報値)の落ち込みとなり、数字のうえでは厳しい結果となった。
来年以降、経済は回復するのだろうか。うまく消費税値上げの影響さえ克服できれば、安倍さんの勝ちであるが、2014年第4四半期の結果と来年の実績を見なければ何とも言えない。この11月にOECDが出した経済予測の結果では、2014年の成長率は0.4%、2015年が0.8%、2016年が1.0%である。残念ながら2012年の1.4%、2013年の1.5%ほどの勢いはない(図3参照)。
世界との比較で見ると未だに日本は問題を抱えている。先進国の中で米国は依然として高い経済成長を維持している。日本と同様に経済の落ち込みに苦しんでいるEUも2014年以降は日本を越える成長を遂げると予測されている(図4参照)。
私は、日本の経済を成長路線に乗せるには金融政策や財政政策だけではもう無理と思っている。
日本の経済構造を抜本的に変えなければ、経済成長は望めない。日本はもはや輸出で金を稼ぐ貿易立国ではなく、所得収支が貿易収支を上回ったのは2000年代中頃の遠い昔の話である。為替を低く誘導し、輸出で経済を成長させようというのは韓国や中国の話でしかない。自動車や電気製品は過去の産業である。もっと付加価値の高い産業を日本に引っ張ってこない限り、次の産業は起きない。しかも、人口はますます老齢化していく。
この点で、安倍さんが言う「第三の矢」は重要であるが、これまでのところ思い切った改革ができていない。とりわけ農業ロビーを相手にすると、からきし意気地が無い。農協改革にしてもTPPにしても前に進んでいない。
安倍さん、この選挙で負けることはないでしょうから、構造改革を通した経済成長を実現して下さい。