アフターサービスでわかる日本のPCメーカーの凋落 (2022/9/20)
もはや日本のPCメーカーは国内でしか商売ができず、国際的に見ればマーケットシェアは微々たるものである。その日本ですら、レノボ、デル、ヒューレットパッカード(HP)といった海外勢が圧倒的に強い。その昔、98シリーズで存在感を示したNEC1/、そして富士通のPC部門2/は現在レノボの傘下にある。東芝のダイナブックはシャープに売却され、そのシャープは台湾の鴻海の子会社である。つまり、これら三社は中国と台湾企業の傘下でブランド名を保つにとどまる。
そんなマーケット構造ゆえに、日本のPCメーカーは薄利多売の競争下で利益が確保できず、儲かっていない。安売りするがゆえに、アフターサービスに手が掛けられない。
私はMac使いであるが、業務用のアプリケーションが限られることから、現在、国産PCメーカーA社のWindows PCも二台使っている。二台ともこの春買い換えたばかりであるが、一台の筐体部品が外れてしまった。
しかし、修理の申込が大変な作業であった。ウェブから申込をすると、チャットでの診断になる。多分係員が少なすぎるのだろう。入力しても返事が来るまで10分、20分掛かる。そのうち回線が切れてしまった。A社のウェブのあちらこちらを探してやっと電話番号を見つけたが、今度は電話をしても繋がらない。何とか修理の申込を済ませた時には、優に2時間が経過していた。
ピックアップサービスを頼み、モノを渡したのは良いが、その後の連絡が無い。痺れを切らし、電話で状況を聞くと未だ修理工場に届いていないので、確認すると返事があり、そこで電話を切った。その日の午後、入荷しましたとEメールが届く。ピックアップから工場到着まで、実に一週間掛かっていた。
二日後にEメールが入り、モノを修理するか、返却するかウェブで回答するようにとある。修理するにしても部品は有償という。ちょっと待ってくれ、ウェブ診断では修理は無償とある。保証書を見ても、通常の使用でハードウェアが壊れた場合は無償修理とある。もちろん、使用の誤りや不適当な取り扱いは有償ではない(それは私にも十分わかっている)。しかし私の場合、使用中にふと見ると部品がポロリと外れていたのであり、使用の誤りや不適当な取り扱いではない。
修理担当に電話を入れると、「保証期間内であっても、部品の修理は有償」の一辺倒で、なぜ私のケースが使用の誤りになるのかについて一切説明がない。結局、修理せずに返却して貰うことにした。
前述のとおり、私はアップル製品を多く使っている、パソコンを含めて、アップルのアフターサービスは抜群によい。問い合わせ先はウェブのトップページの下に無料の電話番号が書いてある。電話で待たされることは殆どない。修理や不良品の交換も非常に迅速である。ましてやA社のように保証期間内でも部品の交換は有償などということは無い。確かにアップルの製品は相対的に高いが、使用することの満足感は高く、かつアフターサービスもしっかりしている。
アップルとA社の違いは、儲かっているか、儲かっていないかの違いに尽きるのだろう。二十年以上前には、NEC、東芝、富士通、日本IBMといった企業は存在感を持っていた。しかし、PCは単なるパーツの寄せ集めであり、付加価値はどんどん低下していった。IBMがThinkPadの製造販売事業を中国のレノボに売却したのは2004年であった。当時は未だPCは儲かっていたものの、IBMの経営陣はその将来性が無いと判断した。
携帯電話だけでなく、PCも同じである。もはや日本企業が国際市場で薄利多売のシェア争いをする分野ではない。
翻って、消費者も「日本のメーカーならば品質が良いだろう」などという根拠のない幻想は捨てて製品を選択した方が良い。私も、次にWindows PCを買い換えるならばデルかHPにする。
1/
NECパーソナルコンピューティングはLenovo NEC Holdings
B.V.(レノボ51%、NEC49%)の完全子会社。
2/
富士通クライアントコンピューティング(レノボ51%、富士通44%、日本政策投資銀行5%)