日本の経済見通し (2016/5/28)

 

 

IMFがこの4月に世界経済の見通しを発表した。相変わらず、日本の経済成長は低いと見られる。日本の経済成長率は、2016年が0.5%2017年は消費税値上げの影響で▲0.1%である(もっとも、安倍さんは消費税の値上げを見送る腹を決めたようであるが)。一方、米国は2016年が2.4%、そして2017年が2.5%、英国は1.9%2.2%、先進国としては高い成長を維持する。この違いは、政治が経済のダイナミズムを維持する政策を打ち出せるか、出せないかにかかっている。

 

日銀は低金利政策で経済を活性化しようとしているが、なかなか実効に結びつかない。金融政策の限界である。

 

日本経済にとって一番の問題は、改革に対して皆が後ろ向きになっていることだろう。日本の現状は、多くの人は出来ない理由を並べ立てるだけで、改革に手を付けない。その結果、何も変わらず、じり貧となる。

 

安倍首相が就任した時に打ち出したのが、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、そして「投資を喚起する成長戦略」という三本の矢であった。しかし、金融政策以外は大して見るべきものがなかった。とりわけ成長戦略では、その目玉となる規制緩和が進まなかった。

 

この三本の矢も、その後、「希望を生み出す強い経済」、「夢を紡ぐ子育て支援」、そして「安心につながる社会保障」というスローガンに変わったが、どれも国民に対する迎合的な言葉に置き換わっただけである。それでどうやって経済成長を達成するのかという具体策は何処にもなく、きれい事を並べただけに過ぎない。

 

新聞のコラムにある読者の意見に、経済成長を追うのは止めよう、もっと心の豊かな生活を追求しようという、一件美しく見える話が出ているが、それを言っているのは大方、60代か70代の年寄りである。彼らはすでに年金を確定し、ディスインフレになれば物価が上がらないので幸せなのでしょうが、若者はそうはいかない。経済が落ち込むということは、給与は上がらない、上がらないどころか下がることも覚悟しなければならないということである。そして、現状では未だ顕在化していないが、やがて弱年層の失業率の増加に繋がる(その前触れが非正規雇用者の増加である)。金融危機で欧州が経験した若者の二人に一人は就職口がないという事態は人ごとではない。経済成長がマイナスということは、明日の暮らしは今日よりももっと貧しくなるということである。

 

政治の世界に戻ってみよう。環太平洋パートナーシップ(TPP)は各国の批准で先が見えないが、日本の議論は既得権益者の保護ばかりであった。バター不足で問題となった生乳の自由化も、政府の規制改革会議はその答申で事実上見送りを決めた(2016519日)。何も変えられないまま、利害調整だけに汲々としている。そうこうしているうちに、活力のある企業はグローバル化を進め海外に出て行き、国内に投資するものはいなくなる。長期的には、経済の縮小である。

 

それがチャレンジ精神を失った、老齢化社会の未来なのだろうか。

 

 

 

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