日韓問題
(2015/6/24)
韓国で朴槿恵大統領が、我が国で安倍首相が就任して既に2年半が経ったが、その間、両国の関係は最悪の状況が続いてきた。直近の問題でいえば、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録と、この夏に予定される安倍首相の戦後70年の談話である。
前者の世界遺産登録では、申請している23資産のうち7資産で朝鮮半島出身者が強制労働させられたとして、韓国政府は登録に断固反対した。そして、登録を決定するユネスコの委員会に対しても外交的に反対をアピールした。これに対して日本政府は、徴用工問題は戦時中の話であり、遺産登録が対象とする時期と異なると反論した。また、ユネスコ委員会に対しても、韓国に対抗して外交的なロビー活動をするという話まで伝わっていた。
今回の和解案は、資産の説明文に徴用工の歴史的事実を記載することで着地しそうである。それが一番妥当な方法だろう。日本政府がこれまでの主張を押し通し、遺産登録と徴用工問題は時期が異なるので関係ないと言い切って、遺産登録のいいとこ取りだけを手にするというのであれば、ユネスコ委員会の理解は得られないだろう。歴史は一連のものであり、徴用工問題は過去の歴史、しかも負の遺産として見つめるべきである。日本が成熟した先進国としての矜持を持つのであればなおさらのことである。
さて、これまで頑なであった韓国がここで急に歩み寄りを見せたのは何故だったのだろうかとも思う。朴槿恵大統領は就任以来国内の支持を得るために、日本に対して強硬な姿勢を示してきた。しかし、その一方で、内政問題は必ずしも旨く行っていたとは思えない。セウォル号の転覆沈没事故、就任後続いた三人の首相辞任、そして今回のマーズ感染と問題が続き、6月のギャラップの調査では、支持率が29%にまで下がっていた。そんな政治的な環境が影響したのかもしれない。
後者の安倍首相の戦後談話については、今日の新聞によれば、閣議決定はしない、すなわち政府の合意ではなく首相個人の談話になるという。これも、韓国や中国に対する、外交的な配慮があったものと見られる。談話が出るまで、具体的に中韓がどのような反応を示すか分からないが、少なくとも安倍首相は外交問題の重要さは肝に銘じた方がよい。首相の地位にある限り、海外から歴史修正主義者であるという印象を持たれることは最悪の事態である。
安倍首相が就任後1年目に靖国神社を参拝したことは、国内的には一部の支持者にアピールしたかもしれないが、外交的には大きな軋轢を起こした。外交とは日本だけの論理で進むものではない。相手国に対する配慮も必要である。安倍首相言うように「未来志向」であるならば、なおさらのことである。