日本航空の再建は必要だったのだろうか 2010.9.8

 

この8月末に、日本航空と管財人の企業再生支援機構が東京地方裁判所に更生計画を出したが、今更ながらというのが私の感想である。

 

更生計画では、5200億円に及ぶ銀行団の債権放棄に加え、支援機構が3500億円の融資を行うことで、20103月末の9600億円の債務超過を解消するという目論見である。これと並行して、16000人の人員削減と赤字路線殻の撤退でコストを下げる。利益を確保した上で、中長期的には格安航空事業(LLC)への参入も検討するという。

 

しかし、これで本当に再建できるとは、少なくとも私は信じていない。そもそも論で言えば、昨年の段階で、日航を倒産させ、資産を売却、整理すべきであったと思っている。世界中の航空会社が生き残りをかけた競争に入って、既に久しい。本来であれば、20年以上前に日航は国際市場で生き残れるだけの企業体質に変わっていなければならなかった。それをしなかったのは、経営者の責任である。

 

欧州を見ても、単得で生き残れるのはルフトハンザ、エールフランス、ブリティッシュエアーくらいでしかない。生き残りの条件は、規模の経済が生かせること、コスト削減が追求できることに収斂する。規模が小さいところは、倒産するか、吸収されるかという憂き目にあった。スイス航空が倒産したのはずいぶん昔の話しである。ベルギー・サベナ航空もつぶれた。KLMは生き残りのため、実質的にエールフランスの経営下に入った。イタリアのアリタリア航空も再建策で迷走した挙げ句、精算会社と生き残る航空会社(アリタリア・イタリア航空)に分割された。このアリタリア・イタリア航空も単独での生き残りは難しく、いずれエールフランスかルフトハンザとの提携に頼ることになろう。

 

米国を見ればもっと厳しい。生き残りをかけた合従連衡は当たり前の話しであり、倒産した航空会社はいくらでもある。

 

さて、日航がなぜあのような形で生き残ることができたのかといえば、それは日本だけの特殊事情でしかない。当初は、日航がつぶれれば、地方の航空の便が切り捨てられるという声が出たが、結局、日航再生のためには赤字路線を廃止せざるを得ない。本来、地方の航空輸送をどうするかというのは政府の話しである。過去何が起きてきたかといえば、政府と日航がなれ合いとなり、赤字路線を維持する事と引き替えに、別の路線や発着枠で優遇するという、癒着の構図であった。結局は、実に9700億円の債務超過で実質的に倒産した。ほぼ、1兆円の規模である。

 

今の再生計画では、国の保証付きで、機構がさらに3500億円を融資する。失敗すれば、すべて、国民につけが回る。財政赤字で、景気対策にすら抜本的な手が打てない政府にしては、全くの大盤振る舞いである。もうひとつ、LLCへの参入などという話が出ているが、既存の市場でまともにコスト競争ができていない日航の手に負える分野ではない。LLCに求められるのは真の起業家であり、そのような人材が日航内部にいたら、今の停滞楽はあり得ない。希望的観測と、実力とは全く別の話である。

 

 

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