札幌オリンピック誘致 (2022/2/6)

 

 

オリンピックは、その憲章とは裏腹に政治そのものである。今まさに、北京で冬季オリンピックが開催されたところである。これは格好の政治駆け引きの場になった。

 

中国の内政に目を向ければ、習近平国家主席にとって、今年秋の党大会で異例の第三期目の就任を果たすため、どうしても北京大会を成功裏に終わらせねばならない。

 

一方、外交に目を向ければ、中国の人権問題を理由に、日本を含む欧米の自由主義陣営は大会開催に外交的ボイコットを行った。この動きに対して、中国とロシアは開催式に先だって首脳会談を行い、習近平とプーチンは中国とロシアの連帯を約束した。言うまでもなく、これは米国に対する強い牽制であり、とりわけロシアにとって、目前の不穏なウクライナ情勢に対する中国からの同意取り付けが必要であった。

 

さてさて、こんな北京大会の開催を横目に見ながら、日本国内では2030年に向けて札幌大会誘致の動きが進んでいる。札幌への誘致については、先週、朝日新聞が「耕論」という特集記事で、賛成と反対の意見を掲載した。(朝日新聞 2022/1/23

 

賛成派は札幌商工会議所副会頭の勝木紀昭氏である。彼は札幌への誘致を推進する。しかし、彼の主張は50年前の1972年札幌オリンピックの発想から全く抜け出していない。曰く、落ち込みが激しい北海道経済を支えるためにインフラ整備が必要であり、五輪のような大型プロジェクトがなければ国の支援のある公共事業を引き出すことはできない。さらに、大会を通して北海道経済の底上げを図りたい、と言う。

 

一方、反対派は一橋大学特任教授の町村敬志氏である。彼は、「五輪は時代遅れである」と、一刀両断。

 

曰く、札幌市は1972年冬季大会の成功体験に引きずられ過ぎている。都市再開発にとって、五輪はお手頃な目標であり、今回の札幌市の招致も、こうした流れにある。老朽化したインフラの再整備や開発が必要なら、単体の事業として行うべき。五輪は魅力的ではあるが、しょせん短期間のイベントに過ぎない、と主張する。

 

札幌でも、スキーやスケートなどウィンタースポーツに触れる機会が減っている。市の調査では、20歳以上が年に1回以上行う率は12.0%。 新型コロナを経験した市民は何を求めているのか。その声に耳を傾けることが大切と、彼は結んだ。

 

町村氏の意見に頷く人は、多いだろう。私も同じである。

 

昨年の東京オリンピックの教訓はまだ記憶に新しい。当初予算は7300億円であったが、締めて3兆円は超えたと言われる。この手の話、公共予算では常について回る。当の役人に言わせれば、「小さく産んで、大きく育てる」である。その後始末は、税金という形で国民の付けに廻る。確かに選手の活躍は感動するが、3週間ほどのイベント開催に3兆円也の費用は余りにも高すぎた。

 

 

 

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