未曾有のインフレーション (2022/7/1)
パンデミックが収束し経済回復に入ったものの、供給側が追いつかないことでインフレ基調となった。とりわけ米国では、パンデミックで失われた労働力が元に戻らず人手不足となったことが大きく影響した。そんななか、ウクライナで戦争が勃発し、世界的にエネルギーと食料の逼迫が起き、インフレをさらに煽ることになった。
とりわけ米国の物価上昇は激しく、これが連邦準備制度理事会(FRB1/)の利上げ判断に至った原因である。その余波で、この春以降、金利の低い日本から米国へのキャリートレードが起き、20年ぶりの円安を呈している。
この7月の参議院選挙に臨む与野党共に、インフレ対策が政策議論の一つに上がった。野党は岸田内閣に対してインフレへの無策を口にするが、別に岸田内閣がインフレを悪化させているわけではない。
むしろ日本のインフレは、先進国の中ではかなりましな方である。経済協力開発機構(OECD2/)が纏めた過去1年間の消費者物価(CPI3/)の上昇率を見れば明らかなように、G7の中で日本が最も低い(図1参照)。
直近の4月で見れば、日本は対前年同期比2.5%、米国は8.3%、欧州もフランスの4.8%を除けば、英独伊の3カ国は6%を越える。4月に再選されたマクロン大統領の与党は、6月の国政選挙で敗北した。その敗因は物価の高騰であった。
もう少しインフレの要因を見てみよう。食料品とエネルギー価格の上昇は庶民生活に大きく影響を与える。他の商品と違い、値上がりしたからと言って、ハイそれでは買うのを止めましょう、とはいかない。
食料品の値上がりは、4月時点でフランスが最も低く前年同期比4.2%、日本はそれに次ぐ4.7%であった。ちなみに最も値上がりが激しかった米国は10.8%を記録している。
エネルギーの値上がりで見ても、同じく4月時点の比較で日本が最も低い19.1%、最も高い英国は51.9%であった。
このデータを見て喜んでいれば良いというわけではないが、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻で世界中がインフレに見回れたなか、日本は相対的に「まだマシ」な方にある。
1/
Federal
Reserve Board
2/
Organization
for Economic Co-operation and Development
3/
Consumer
Price Index