スコットランドの独立投票 (2014/9/22)
世界の注目を集めたスコットランドの独立の賛否を問う住民投票は最終的に英国に留まることを選択したが、多民族が一つの国として纏まることの難しさを教えた。英国に限らず、EU各国も多かれ少なかれ同様な問題を抱えている。それぞれの地域住民が持つアイデンティティへの拘り、歴史的な背景、そして拡大する貧富の格差が独立の意欲をかき立てる。半面、独立したからと言って、幸せになれるかどうかはまた別の話である。今回のスコットランドの出来事も、結局、そのあたりの判断が住民投票の結果となって表れた。
500万人の経済規模で国の経済をやり繰りすることは簡単ではない。独立推進派は北海油田からの収入を福祉に使うことをうったえたが、北海油田の生産はもう既に衰退期にある。国の経済を支える次の産業をどうするかという展望は描けていない。スコットランドが経済的に停滞したのは、古い産業が消えていくなかで新しい産業が育成できなかった結果である。加えて、独立したからと言って自国通貨を発行できるだけの経済基盤はないので、ポンドを使い続けざるを得ない。スコットランドは、やはり妥当な判断をしたのだろう。
今回の出来事、遙か離れた海の向こうのお話のようにも見えるが、その根本には地域間格差、貧富の格差の拡大という社会問題があった。となれば、どの国も潜在的に同様な問題を抱えている。
日本とて同じである。地方は経済水準から言えば、大都市圏、とりわけ東京圏との格差は大きい。東京に住む人達に言わせれば、地方に比べて一票あたりの重みは低く、しかも自分たちが払った税金は所得の低い地方部に流れていく。一方、沖縄は大都市圏の繁栄の下で大きな犠牲を払ってきた。戦時中は日本国内で唯一の戦場となり、多くの一般人が命を落とした。そして戦後も、基地問題で多大な負担を強いられた(その大きな現れが普天間基地の移転問題である)。
沖縄が独立すると言う話はまだ出ていない。が、沖縄の人達にとって、同じ日本国民として政治的、経済的に不利を強いられてきたという思いは強いだろう。政治とは、国民に対して如何に公平感を持って社会的な便益が提供できるのか、税という仕組みを使って如何に公平感のある富の再配分が出来るのかと言うことになるのだろう。ただし、その公平感とは、富める者と貧しい者、そしてコストを負担する者とそのコストで便益を受ける者との間で大きく開きがある。それをうまくマネジメントできるかどうかが民主主義の成熟度であり、政治家の能力である。
もし日本の政府だったら、今回の独立運動に対して英国政府以上にうまく対応できただろうか?