お役所の利権とITリテラシー (2020/5/14)

 

 

COVID19の騒ぎの中、政府は給付金の支給で大きな混乱を起こしている。この混乱、私の目には、お役所の利権の為せる技か、はたまたお役所のITリテラシーの欠如によるものとしか見えない。

 

今朝の朝日新聞に、全国一律に10万円を配る「特別定額給付金」の作業が大混乱しているという記事があった。その見出しには、「10万円ネット申請、逆に手間 重複・誤記入も受け付け...自治体混乱」とある。

 

政府は、マイナンバーカードを持っている人はオンライン給付でいち早く受給出来ると宣伝したが、どっこい、実際は窓口となる市町村で混乱が生じ、どうもそうはなっていない。記事によれば、自治体のトップからは「郵送申請よりかえって手間がかかり、本末転倒だ」との声が出ているという。

 

混乱の原因は、人海戦術でマイナンバーの情報と住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の情報を付き合わせて確認しなければならないことにある。要するに、両システムは共に莫大な費用をかけて作り上げたが、同じ政府の情報システムでありながら、両者に全く互換性がない。

 

さらに、ウェブで申請しようとしたもののパスワードがわからない、入力を失敗してカウントがロックしてしまったという人達が、何とかしてくれと役所に殺到したことが混乱に拍車を掛けた

 

因みに、住基ネットの構築と運営費用は初期投資額が約390億円(産経新聞 2016.1.1)、年間維持費用が130億円(総務省ホームページ)という。そして、住民基本台帳カード(住基カード)の交付率はといえば、僅か5%ほどにとどまる。早い話、膨大な費用をかけたものの、国民は殆どそれを使っていない。

 

もう一方のマイナンバーカードの交付率を見ても、今年の120日現在で15%と、これまた低い。

 

どちらのシステムについても、国民から見ればカードを持つことに何の利便性も感じられないのだから、そうなるのは当たり前である。

 

二つのシステムともに、政府にとっては個人の情報が管理できるので大きなメリットは有ろうが、それが省庁間でシステムとして共用できていないというのだから、これまた日本的かつお役所的な現象である。そこには、さらに役人の利権が絡んでくる。住基ネットの運用は地方公共団体情報システム機構が行い、いわずもがなこの組織、総務省の役人の天下り先である。

 

さて、役所に利権の話は脇に置き、今、各自治体の役所で10万円の給付のため、人海戦術で両システムの情報を手作業で確認するという前時代的な問題に目を向けてみよう。

 

何らかの経緯があって組織の中で複数のシステムが併存することはあり得るが、民間企業であればそれを放置し続けることなどはありえない。二つのシステムをミッドウェアで繋ぐ、あるいは最終的に両システムを纏めるというのが当たり前の話である。

 

マイナンバーカードについては、来年3月から健康保険でも使えるようになること、将来的には民間でもその情報の一部を使えるようにするという話もあり、利用面での拡張性はあろう。であれば、失敗したとしか思えない住基システムをマイナンバーのシステムに取り込む、あるいは繋げれば済みそうなものである。

 

今、各自治体で起きているドタバタ騒ぎはまさにITを巡る茶番劇でしかない。しかも、その現場からの声が「オンライン申請が増えるほど確認作業が増えて10万円の支給が遅れる」とは、何をか言わんやである。

 

少なくとも私が仕事で繋がりのある民間企業と比較する限りにおいて、役所のICT活用は明らかに遅れているし、残念ながら職員のITリテラシーもとても高いと思えない。それがこのドタバタに拍車をかけていると感じる次第である。

 

 

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