ハイブリッド車の売れ行きは好調、しかし所詮過渡期の技術
(2024/9/24)
世界の自動車市場を見れば、2022年から2023年にかけてバッテリー電気自動車(BEV1/)の売れ行きに陰りが出た。(それでも2023年に世界で950万台、うち中国で540万台売れたのだから、凄いの一言に尽きる。)
環境意識+物珍しさから、BEVは高所得層を中心に販売数を伸ばしたが、それが頭打ちになった。庶民が買うにはまだ価格が高い。その結果、北米市場でいえば、価格が安く、燃費の良いトヨタのハイブリッド車(HEV2/)が売れ、昨年度、トヨタは好調な営業成績を残した。
中国のBEV急拡大と欧米での内燃エンジン車への販売規制を見て、欧米の自動車メーカーは一気にBEVに舵を切ったものの、ここに来て戦略を大きく修正した。
いち早く内燃エンジンを捨て、2030年までに販売の100%をBEVにすると発言したボルボは、BEVとプラグインハイブリッド(PHEV3/)を足して90%にするとトーンダウンした。フォードはBEVの大型SUVの計画を破棄し、HEVに替えると発表した。フォルクスワーゲンはHEVへの投資を増やし、BEV計画を見直すとした。
政府の政策で一気にBEVが市場を席巻した中国でも、同じ新エネルギー車の取り扱いとなるPHEVの販売が急増した。高コストのバッテリーの容量をおよそ1/3に小さくすることで車両価格を下げ、かつ給油所に比べればまだ少ない充電所の整備を補えるからである。
中国のPHEVの販売台数は2021年の55万台が2023年に270万台へと、ほぼ5倍に急拡大した。BEVの販売台数は、その間270万台から540万台への倍増だったので、その急成長ぶりがよくわかる。
しかし長期的に見れば、HEVもPHEVも過渡期の技術でしかない。EUは2025年までにHEVを含む内燃エンジンの新車販売を禁止にする。カリフォルニア州は2035年までに、販売する新車の20%までをPHEV、残りをBEVに規制する。
大まかに言えば、世界の主要な車市場でHEVが(おそらくPHEVも)販売できるのは向こう10年という時間軸が大きく変わるものではない。
長期的にBEV、それを中期的にPHEVで繋ぐという市場戦略を描くなかで、日本自動車メーカーの動きは中国メーカーに大きく引き離されている。
中国のBYDは今年5月に2車種の新型PHVを9.98万元(約220万円)から発売すると発表した。燃費性能を高めた新技術を搭載し、ガソリンとEVモードの合計で2100キロメートルを走行できるという。
これに対して、トヨタはすでに商品にPHEVを持っているものの、日産とホンダはまだ技術がない。先日、ホンダはPHEVを三菱からOEM4/で供給を受けると発表し、日産はこれから商品開発を始め、2020年代後半に商品化するという。
日本ではBEVの将来について何やら否定的な見方も多いが、気が付いたら日本の自動車産業がいつの間にか世界市場から落伍していたという話しは十分あり得る。自動車産業の歴史は栄枯盛衰の歴史である。1960年代から1970年初め、米国のビッグ3は圧倒的な地位にあった。その頃、日本の自動車メーカーはやっと米国市場で車が売れるようになったという時代であった。それから半世紀を過ぎた今、販売台数でいえば、GMは世界の4位、フォードは6位にとどまり、クライスラーはとうの昔にフィアットに吸収されてしまった。そのフィアットもグループPSA5/と合併し、ステランティスとなった。
これから10年後、20年後に世界の自動車市場がテスラとその他幾つかの中国メーカーに席巻されていたとしても不思議はない。
1/
battery electric vehicle
2/
hybrid electric vehicle
3/
plug-in hybrid electric vehicle
4/
original equipment manufacture
5/
かつて存在したプジョー、シトロエン、DS、オペル、ボクスホールブランドで自動車の製造・販売を行うフランスの多国籍企業。