『人体、なんでそうなった? 余分な骨、使えない遺伝子、あえて危険を冒す脳』 ネイサン・レンツ(著),久保美代子(訳) 20198月 化学同人

 

 

原文は『Human Errors: A Panorama of Our Glitches, From Pointless Bones to Broken Genes』。著者は生物学者であり、大学の先生でもある。

 

翻訳本は2640円と少々値が張るが、Kindleの英語版であれば、僅か487円と非常にお買い得。医学用語がいろいろと出て来るので、英語で読んでいると引っかかる部分もあるが、英文そのものはそれほど難しくない。

 

人間とは霊長類の頂点に立つ生物であり、お猿さんよりちょっと進化して賢い、と皆さん思っている。

 

それは間違いではなかろうが、人間がそうなったのは進化の歴史の中でたまたまここまで辿り着いただけ、という単なる結果論に過ぎない。

 

ところがこの進化とやら、結構場当たり的で、ご当人、つまり人間にとっては必ずしも理想的な経路を歩んではいないし、当然理想とする結果にも至っていない。それは当たり前。進化とは偶然の突然変異の積み重なりにすぎず、神様は人間を完璧な姿に設計してはくれなかった。

 

他の動物と違って2本足で立ったことで、人間は他の動物よりも遙かに進化していったが、身体を直立させたおかげで今や腰痛に悩まされている。

 

科学の最先端分野として取り上げられる遺伝子。その中には、ヒトという種の凄い遺産がぎっちり詰まっていそうであるが、実はその殆どが壊れたDNAの破片で埋め尽くされている。つまりガラクタの山ともいえる代物である。しかもそこには、その昔感染したウイルスの死骸も混じっている。そんなウイルスの破片が何かの切っ掛けで元の形に再生されると、体内で恐ろしいことが起こることになる。

 

免疫は人体を病気から守る仕組みであるが、その免疫が人間自らを攻撃することもある。

 

極め付けは、最も賢いはずの人類の脳は結構いい加減で、その容量も限られている。当たり前に思い違いをするし、記憶を都合よく忘れてしまう。

 

ま、そんな人体の残念なところをお話ししてくれる本である。そう言えば、最近人気の出ている児童書で、『ざんねんないきもの事典(高橋書店)』というのがあると聞いたが、これはその人間版である。

 

科学好きにはうってつけの面白い本である。

 

 

説明: SY01265_「古い書評」目次に戻る。

 

説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: door「ホームページ」に戻る。