ロシアのエネルギーに高課税を (2022/4/29)
この面白そうな話、今週のエコノミスト誌1/の記事である。
EUはこれまでロシアからの石油・天然ガスの輸入に460億ドル(USD1=¥130で換算すれば約6兆円)を支払ってきた。経済制裁としてロシアからのエネルギー輸入も止めたいが、直ぐさま出来るわけではない。石油の調達先の変更は比較簡単であるが、パイプラインで繋がる天然ガスはそうはいかない。
ドイツを例にあげれば、侵攻前と後でロシアへの天然ガス依存度が55%から40%に下がったという程度である2/。天然ガスは主に家庭用と発電用エネルギーとして使われており、ロシアからのエネルギーの輸入停止は、経済的に大きな打撃をもたらす。ドイツ中央銀行(ブンデスバンク)は、ロシア産エネルギーの禁輸はドイツのGDPを5%押し下げると見ている。
EUはロシアからのエネルギー輸入を直ぐさま止めることはできないが、ではロシアの石油と天然ガスに高課税をかけてはどうだろうかという話である。ロシア産エネルギーへの課税の方が禁輸措置よりも、有効だろうというのがエコノミスト誌の論である。
石油であれば、課税した税金を使って他の調達先から石油を買うことは容易である。石油はコモディティーであり、国際価格というものがある。ロシアはそれでも石油を売りたいならば利益を削って値下げするしかない。
天然ガスは石油ほど簡単ではないが、その税金を使って調達先の多様化を図ることはできる(LNGへの転換はその代表だろう)。一方、ロシアにとってパイプラインガスの売り先を変えることは、新たな投資を含めてそう簡単ではない(早い話、大口の売り先は中国しかないが、現状、パイプラインが直接繋がっているわけではない)。
禁輸と高課税のいずれにせよ、ロシア経済が悪化すれば、戦争の継続は難しくなる。そうすれば、欧州に平和が訪れるだろうというお話。
1/ The
Economist, April 22th 2022 edition
2/ 日本経済新聞 (2022.3.26)