橋下発言、「慰安婦問題」その顛末 (2013/5/29)

 

 

513日の橋下大阪市長の「慰安婦問題」発言は、海外特派員に対して行った527日の東京会見でおおよその終結を見るまで、国内のみならず、海外においても、大きな波紋を呼んだ。この間、新聞記者との間でかなりの回数にわたって記者会見を繰り返しており、その詳細が朝日新聞のウェブに全文公開されている。

 

橋下氏の発言を時系列で見ていくと、彼の当初の強気の姿勢が少しずつ変化していったことが分かる。

 

とりわけ、沖縄の下米軍司令官に対して「風俗業の活用」を勧めた点については、最終的に不適切を認め、撤回と謝罪を行った。彼は、当初この風俗業発言について、風俗業は法で認められているもので、売春を意味するものではないと抗弁していた。しかし、司令官との対話の中で、米兵による強姦事件を話題として、「風俗の活用」という言葉を使えば、相手が「裏で売春できる場所を使いなさい」と言われたと解釈するのは当たり前の話である。そもそも、橋下氏は、司令官に対して「風俗の活用」をお勧めすれば、彼が「それはよいアイディアである」と答えるとでも思っていたのだろうか。

 

要するに、橋下氏は政治家として余りにも不用意で、場を考えない発言をしただけのことである。その結果、彼は大きな代償を払うことになった。6月に予定する訪米について、521日の記者会見で橋下氏は、例え相手先のアポイントメントが得られなくとも「僕は行こうと思っています」と発言したが、528日には、結局断念するとの意向を発表するに至った。当たり前の話である。米国の政治家にとってみれば、スキャンダルを起こした日本の政治家(橋下大阪市長)と会ったところで、何の得にもならない。

 

米軍司令官に対する風俗発言以上に大きな波紋を呼んだのは、「慰安婦問題」である。そもそもの発端となった513日の発言で、精神的に高ぶっている集団(兵隊)に、慰安婦制度は必要なことは誰でも分かるといった発言をしたことで、世の中から袋だたきにあうことになった。彼は、この発言は新聞記者が言葉の一部だけを取り上げて報道したことにより、彼の意思とは180度異なって、あたかも慰安婦制度を肯定したかの如くとられたと反論した。さらに彼は、慰安婦問題で日本の責任を明確に認め、日本は謝罪すべきと、繰り返し述べている。

 

ただし、橋下氏は、日本の非は明確に認めつつも、この慰安婦問題の中で、米、英、仏、独でも同じような制度はあったのであり、日本の慰安婦問題だけが世界で取り上げられ、非難されることに疑義を唱えている。彼としては、日本だけがレイプ国家の如き言われ方をされるのは、我慢できないということなのだろう。

 

後からの説明を聞けば、それなりに彼の思いが理解できる部分もあるが、これも政治家の発言としては失敗であったと感じる、事実、527日の海外特派員向けの会見での反応は概してよくない。とりわけ、日本だけでなく、米、英、仏、独でも、慰安婦に類似した制度があったという話は、論点のすり替えと取られている。

 

これもどこかの国の特派員が述べているように、橋下氏は腕利きの弁護士かもしれないが、政治家としては失格と言われても仕方がない。513日以降、およそ2週間にわたる日々の新聞記者団との会見でも、彼は相手を言い負かすことに地道をあげている。裁判を争う弁護士としてはそれでもよかろうが、有権者の心を引き付け、支持を得なければならない政治家の態度ではない。これでは、夏の参議院選挙を控えて維新の会が懸念するように、今まで彼を支持してきた人々も、かなり離反するだろう。

 

 

 

 

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