組織を腐らせる昭和のオヤジ達 (2018/8/4)
先週の朝日新聞の朝刊に面白い記事が出ていた。題して「続くパワハラ・セクハラ…まだ「昭和」に消耗してるの?」。
朝日新聞社の記者が映画監督と大学教授の三名にインタビューした結果を纏めたものである。その中の一人、東京大学の安富歩教授のお話しは本質を突いている。
「昭和のオヤジ」の行動は昭和の価値観を引きずっており、それは日本人の「立場主義」に根ざしている。立場主義とは、「立場に付随する役割を果たすために全力を尽くす。しかし、立場を守るためならば、何をしてもよい。」という発想である。自ずとセクハラやパワハラを引き起こす。
昭和の時代であれば、立場の弱いものは理不尽とは思いつつも我慢を強いられた。であるが故に、昭和のオヤジは付け上がる。しかもご当人は、「俺は何て組織を指揮する能力があるのだろうか」という、わけの分からない自己満足に益々浸っていく。幸いにも、時は高度経済成長期。取りあえず神輿にぶら下がって身体を動かしさえすれば、繁栄のおこぼれには預かれた。
しかし、平成も終わりを迎えようとしている今に時代にこんな話は通用しない。新しい価値を生み出さねば競争には生き残れない。そこには多様な価値観がなければならないし、個の能力が活かされなければならない。旧態依然とした立場主義では、組織も国も滅ぶ。
時代の流れについて行けない昭和のオヤジ達は立場主義のままであるが、若い人達はそうではない。セクハラ・パワハラを受ければもはや黙っていない。
そんな世の中の変化を知ってか知らずか、問題を起こす組織は後を絶たない。とりわけ、官庁、大学、スポーツ団体にそれが多い。そもそも体質が保守的、企業と違ってスキャンダルがあってもそれで組織が潰れるという意識が弱いためだろう。
森友・加計学園疑惑と次官のセクハラ問題を引き起こした財務省、局長が息子を不正入学させた文科省、監督が選手に対してパワハラ事件を起こした日本レスリング協会、悪質タックル問題を切っ掛けに独裁的な理事会運営体制が暴露した日本大学、そして今回新たに出てきたのが、日本スポーツ振興センター(JSC)助成金の不適切使用から内情が暴露されたこれまた独善的な会長が君臨する日本ボクシング連盟。よくもこれだけ続いたものである。
組織の長であれば60歳代、さらには70歳代であっても不思議ではないが、戦後高度経済成長期の発想でしかものが考えられないとなれば、これは老害に行き着く。前述の安富先生の言葉にあるように、彼らの多くは立場主義が骨の髄まで染みつき、行動規範がそこにしかない。時代の変化について行けなくなった組織は哀れである。