『AI・兵器・戦争の未来』 ルイス・A・デルモンテ(著) 川村幸城(訳) 2021年3月 東洋経済新報社
原題は『Genius Weapons』、つまり天才的能力を持った兵器。内容は確かに兵器と結び付いているが、そのほとんどは人工知能、つまりAIの進化と人間に対する脅威、そして警告を述べている。
AIは我々の身近に既に入り込んでいる。スマートフォンに話しかければ、いろいろと答えてくれる。車にもAIが搭載されつつあり、自立運転は実用化に入りつつある。
兵器にもAIは利用されている。車と同様に自立兵器は存在する。つい先日、カブールの自爆テロの報復として、イスラム国ホラサン州(IS-K)の標的を無人機が爆撃した。
このAIは何処まで賢くなるのだろう。著者によれば、21世紀中頃までには人間と同じくらいの能力に達する。そう、AIはあと30年ほどで人の知能に達するという。21世紀の後半には、AIは特異点に達し、人の能力を超えた超知能を実現するという。
人と同じ能力を持つとはどういうことだろうか。進化した超能力AIは人を敵と見做し、人類を抹殺しなければならない対象と考えるようになるのだろうか。著者はそれをイエスと言う。まさに、映画『マトリックス』の世界である。
脳移植によって超能力AIとワイヤレスに繋がった人間も現れてくる。科学小説に出て来るサイボーグの如き人間である。人としての脳は存在するものの、思考はAIに支配される。凡人でも、とてつもない知恵者になれそうな話であるが、脳みそがコンピューターに支配されるのであれば、私は遠慮しておく。
何やら恐ろしい未来像が描かれているが、AIに関心がある方々にとって面白そうな内容である。