『不機嫌な英語たち』 吉原真理 20239月 晶文社

 

 

著者の肩書きにハワイ大学教授とある。以前、この方の本をどこかで読んだ気がすると思って調べてみるとありました。『ドット・コム・ラバーズ』、なかなかウイットに富む文章で、はい、面白く読ませて頂きました。

 

今回の本は私小説ともいえるもの。彼女の幼い頃のお話しに始まり、小学校時代にアメリカに渡った後、再び日本での学生生活、そしてまたまたアメリカに移るというこれまでの半生を書き綴る。

 

アメリカは人種のるつぼで、多くの移民が住む。日系アメリカ人、中国系アメリカ人、ベトナム移民など、彼女が付き合った人達はそれぞれに己のアイデンティティを持ち続け、アメリカ社会で人生を切り開こうとする。

 

アメリカは努力すればチャンスは掴めるが、移民はマイノリティで、エスタブリッシュメントのグループではない。人種差別とはまったく異なる意味で、全ての人が同じ属性をもって同じように存在するわけではない。日本で生活する日本人の多くは、自らのルーツを考え、己が何者であるかを問いただすことなどまず無い。

 

アメリカでは、国籍はアメリカでも英語が上手く話せない人は珍しくない。とりわけ、第一世代の移民は日々の生活だけで手一杯となり、英語教育を受ける機会もなく、強い訛りか片言の英語で一生を終える。第二世代になれば学校教育を受けるので、親を乗り越え、英語が母国語の一つとなって行く。

 

著者もそんな環境にあったと言う。幼い時に父親がアメリカ駐在となって家族共々渡米した。現地の小学校に入った当時は、英語はチンプンカンプン。彼女はネイティブの英語を話し、ハワイ大学の英文学の教授となったが、親が話す英語は文法を含めて拙いものでしかなかった。留学でアメリカに来た彼女の日本人友達も、同じレベルの英語であった。

 

英語、そして祖国のアイデンティティ。そんなお話しを理解すれば、タイトルの「不機嫌な英語たち」の意味が解ってくる。

 

 

 

 

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