急増し続けた訪日客の伸びの鈍化2020/1/16

 

 

去る10日、政府は2019年の訪日客数を発表し、韓国人客の急減により対前年の伸びが2.2%に落ちたと発表した。

 

訪日観光客は東日本大震災時の一時的な落ち込みの後、毎年20%を優に越える伸び率で増え続けたが、2018年にはこの伸び率も8.7%に鈍化し、昨年は2.2%になった。

 

ここに来て、「おもてなし」を合い言葉に観光を一つの産業にしようと目論む政府にとって、オリンピックの今年に4000万人の訪日客数を達成しようという目標が極めて危うくなった。

 

しかし、観光産業という目でこの訪日客数を見るならば、年率2.2%で市場が拡大しているのだから、GDPの伸びと比較すれば未だ十分高い数字である(直近の予測であれば、IMFOECD2019年の日本のGDP成長率を0.8%と発表している)。

 

冷静に考えれば毎年2030%で訪日客が増え続ければどこかに歪みが出て来るのも当然である。

 

京都は観光客が増えすぎ、いわゆる観光公害がマスコミでも大きく取り上げられるようになった。

 

日常生活にまで被害が及ぶとなれば、そこで生活する人にとって深刻な問題となる。サラリーマンにとっても、今や東京、大阪、京都での宿泊の高騰は深刻である。とにもかくにもホテルの需給が逼迫してしまった。

 

訪日客数は2000年代後半に年間せいぜい800万人台であったのだから、10年でそれを5倍に増やそうと目論めば、どこかに歪みが出るのも宜なるかなということである。

 

少なくとも今の状況は、受入体制がオーバーフローを引き起こしつつある。

 

その一方で、九州地区のように韓国からの訪日客の急増をあてに投資をしたものの、韓国内で訪日自粛運動が起きた結果、経営に打撃がでるという状況が出ている。イケイケどんどんで突っ走ると、どこかで蹴躓くという教訓はビジネスの習いである。

 

外国観光客もこれ以上数を追うのではなく、客層の多様化を模索した方が受け入れる地元にとっても望ましかろう。

 

2018年の実績で言えば、訪日客の4分の3が中国、韓国、台湾、香港人である。これは東アジア地区からの訪問客(というよりも中国人と韓国人)が圧倒的多数であり、訪日客がグローバル化したのかと問われれば、否と言わざるを得ない。

 

訪日客数の拡大は手始めの観光戦略ではあるが、ここに来てそれが受入能力を超え始めた以上、質でこなすことを考えなければ、地元で日常生活する人との間で軋轢を起こすだけである。

 

観光業としても、どっと慌ただしく人が来て、そして去って行くよりも、訪日客にゆっくりと観光を楽しんで貰い、かつそれ相当のお金をタップリと落として貰った方が有り難かろう。

 

世界中、何処の観光地でも客のボリュームゾーンを狙う商売はあるが、半面、高額のお金を落とすいわゆる上客をターゲットとする商売も存在する。日本の観光地もそろそろ一皮剥ける時期に来たのだろう。

 

ここでちょっと話はそれるが、最後に私のつまらない小言。

 

昨年末、家族で成田空港から海外に出る機会があった。かつてのように係官がカウンター越しに出国手続きするのではなく、審査が自動化された。機械が旅券を読みとり、写真判定で本人確認するのは大きな進歩である。

 

ところが、そこに並ぶ人の流れを捌く係員の作法と能力が全く伴っていない。

 

彼らは恐らく定年退職後の第二雇用で採用された人達なのだろう。一見して60歳代と分かる。対話能力が乏しく、片言の英語しか使えない。

 

とどのつまりは、出国者を言葉で上手く誘導できないので、いきなり人を手で抑え、そこで待てと意思表示する。もう一方の手で、そっちのお前はあそこの機械に行けと指図する。

 

私は少なくとも先進国の空港でこのような不愉快な場面に出会った記憶はない。政府も訪日客に対して「おもてなし」を標榜するのであれば、彼らにマナーと日常英語会話の教育くらいはすべきだろう。

 

人口の老齢化が進むなか、お役所も退職後の人材活用がしかるべき対策となることは分かる。

 

しかし、あの職員の方々(あえて「おじいちゃん達」と呼ばせて頂く)がどのような職歴と地位にあったのか私は知らないが、彼らにはそんな過去のしがらみ(栄光)は忘れて頂きたい。

 

昔の肩書きは昔の話で、今すべき事は今の仕事である。業務の一環として、人に接する際のマナー教育は絶対不可欠。例え、彼らがそんな研修は己の沽券に関わると感じたとしても、である。

 

 

 

 

 

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