中国の学者によるロシア分析――ロシアはウクライナで負ける (2024/1/15)
今週のエコノミスト誌に、ちょっと驚かされる内容の記事が出ていた/*。北京大学の馮宇軍(Feng Yujun)教授の分析である。
結論から言えば、「ロシアはこの戦争で負ける。そして、クリミア半島を含めたウクライナから撤退を余儀なくされる」ということである。
彼は、幾つかの理由を挙げる。それは、①ウクライナの強固な抵抗と国民の団結、②国際社会のウクライナへの支持、③長期独裁を続けたプーチンの外部情報からの孤立、④近代戦争を行う能力の低さ(工業力、指揮系統、情報収集の統合的システムの欠如)と言う。加えて、独裁者となったプーチンが自ら孤立した繭に閉じこもっていることで、内政的にも様々なリスクを拡大していると指摘する。
このあたりの分析は西側の人間から見れば大して目新しいものではないが、ロシアによるウクライナでの戦争が世界の秩序を崩壊させるという意見を、中国という権威主義国家の学者が述べたことにはちょっとした驚きがある。
さらにこうも言う。ロシアと中国という二つの常任理事国が拒否権を濫用することで、国連の安全保障理事会はもはや機能しなくなっている。この状況は、安全保障理事会の改革を加速させることを助長し、ドイツ、日本、インドが常任理事国として加わり、五カ国の拒否権が剥奪されることにもなろう。
習近平の独裁体制の下、中国では言論統制がますます激しくなっている。本音はともかく、中国は外交上ロシアとの協調を謳っている。ましてや、習近平政権にとって、日本が常任理事国に加わり、中国が拒否権を失うなどあり得ない話しである。
北京大学の教授がエコノミスト誌にこのような発言を掲載するとは余りにも意外であった。この記事で、馮教授が政府から「強いご指導」を受けないことを祈るばかりである。
*/ “Russia is sure to lose in Ukraine, reckons
a Chinese expert on Russia,” The Economist, 13 April 2024