五輪開催の経済損得勘定 (2021/6/2)

 

 

今朝の朝日新聞の記事に、このような見出しがあった——「五輪中止の選択肢はない」言い切る官邸 専門家はクギ。

 

官邸とは誰なのか書いてなかったが、すでに海外からの選手団が入りつつあることを見ても分かるように、もはや中止できない、何が何でも開催するつもりだろう。

 

もう一度冷静に、五輪の意味を考えてみよう。3年前に五輪誘致で沸いていた当時、よく言われた言葉が経済効果であるが、もはや強行に開催することの経済効果など、誰も口にしなくなった。代わりに出てきたのが、五輪を中止することの経済損失である。

 

先日、野村総合研究所がその試算を発表した。結論は五輪の経済効果は総額で18108億円、中止すればその金額が損失となるという計算である。また、去る3月に関西大学の宮本勝浩名誉教授が発表した試算では、観客数を収容人数の半分に制限し、海外客は受け入れなかった場合の経済的損失が約16000億円となっている。

 

前提条件の置き方で数字は変わるので、大まかな数字として、五輪中止による損失額がおよそ野村総研の推定額1.8兆円くらいというのは妥当なところであろう。もっとも、そのうち1.2兆円は大会運営費で、既にかなりの部分が国内に落ちている(すなわち、サンクコスト)。入ってくるはずの金が入らないという意味では、チケット販売の900億円と、海外からの来客者が日本で落としてくれるはずであった観光収入にすぎない。

 

一方、五輪を強行開催することでコロナ感染者の数がまた跳ね上がるのではないか、という強い懸念がある。来月20日まで延長され3回目の緊急事態宣言に続いて、五輪開催によって4回目の宣言になりかねないという懸念はますます現実味を帯びてきた。

 

政府のGDP統計値を見てみよう。昨年の秋頃は、2021年に日本経済は回復の道を歩むはずであった。ところが、年末から感染者が増大し、1月に2回目の緊急事態宣言に入ったことで、2021年第1四半期のGDP2020年第4四半期に比べ実質で1.3%減少した。実数で見ると35400億円の落ち込みであった。

 

少々乱暴な推定ではあるが、もし、五輪開催で緊急事態宣言がまたぞろ発令されることになれば、四半期間で3.5兆円ほどの経済の落ち込みを起こすことになりそうである。五輪の経済効果1.8兆円を惜しんで、3.5兆円を失うというのは、どう見てもソロバン勘定に合わない。

 

結局、五輪開催の成果は、放映権料を手にすることでIOCの虚栄心が満足させられること、そして開催の事実を作ることで政府と東京都の面子が保たれる事ぐらいだろう。

 

そして五輪に投資した費用は、誰の負担に?ご心配なく。祭りが終わった後、国民に税金という形でしっかりと付けが廻って来る。

 

 

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