明確に表れた日大と関学の組織管理能力の差 (2018/5/27)
アメフト事件では、その対応が場当たり的かつ稚拙であったがゆえに、日大は記者会見を開く度にますます世間の反感を買うという醜態を晒した。とりわけ、宮川選手個人が開催した記者会見に慌てたのか、内田監督と井上コーチが急遽5月23日夜に開いた記者会見の内容と進行方法は余りにも酷かった。
会見した監督とコーチは宮川選手が前日の会見で陳述した内容を否定し、弁解を重ねるだけに終始したと言ってよい。あのような弁明で事件の全貌が納得できたと考える人はまずいないだろう。
内田監督は、記者から出た「誰の指示で(事件が)起きたのか」という冒頭の質問に対して、「信じていただけないと思うが、・・・・・・」と、非常に頼りない言葉で回答を始めた。彼も世間がどのようにこの事件を見ているか十分わかっていたのだろう。
井上コーチは、明らかに内田監督の顔色を見ながら答えている。そこには良心の呵責があるのか、苦しい言い訳をしていたように見える。それゆえに、当初、井上コーチは宮川選手の陳述を明確に否定していたが、最後には、宮川選手に対してどのような言葉を使ったのかよく覚えていないと曖昧な答えに変わっていった。
そして極めつきは、司会を務めた広報担当職員の言動である。司会者が会見のために呼び寄せた記者との間で口喧嘩を始めるとは前代未聞の光景である。私には、こんな記者会見ならば開かない方が良かったのではないか、としか思えない。
さすがに5月25日に学長が開いた会見では、やっとまともな対応が出来るようになった。
この事件がもはやアメフト部の問題にとどまるものではなく、日大組織としてのガバナンスの問題になっていることは理解できているようである。それゆえであろう、学長は真相究明に向けた第三者委員会の立ち上げを明言した。
しかしその一方で、記者の質問に対する回答では、内田監督の擁護とも取れる言葉や宮川選手が3年生としてチームの成長について行けなかった例とも取れる言葉を口にしている。そして、部の永久停止は考えていないとも言い切った。謝罪の場において、しかも第三者委員会が立ち上がってもおらず、事の真相すら解明されていない今の時点で、このような発言をすることが適切だったとはとても思えない。この場に及んですら、日大の対応には甘さが残っている。
一方、26日に関学アメフト部が開いた日大からの再回答書について見解を発表するための記者会見は日大の対応とは好対照であった。関学は回答書を受け取ることが出来ない理由を理路整然と説明し、ただ一点、真相の解明を求めるという毅然としたものであった。そこには無駄な発言や日大に対する非難じみた言葉はまったく含まれず、非常に紳士的な対応であった。
二つの大学の対応がこうも違うのはなぜなのだろうか。そこには教育の場である大学としての理念や倫理観、そしてそれを実行するための管理体制、そして指導者が持つ意識に雲泥の違いがあるように思えてならない。
その違いこそが「大学のブランド」の違いである。もはやブランドという言葉はそれ自体、質が高い、あるいは低いという意味合いを持ち合わせているわけではない。社会が大学に対して抱く概念でしかない。怖いのは、「ブランドと言ったところで、あの大学ってその程度のレベルの話でしょ」と社会が評価するところにある。