『ディープ・シンキング―――知のトップランナー25人が語るAIと人類の未来』 ジョン・ブロックマン(編) 日暮雅通(訳) 20201月 青土社

 

 

AIは既に一般の人にも馴染みがあり、いろいろな場面でごく普通にお目に掛かる。しかし、その中身を語ることが出来る人はそれほど多くない。AIが出した答えであると言われれば、「へー、そうですか。凄いですね。AIならば間違い無さそうですね」と反応する人も多かろう。

 

そんなAIではあるが、自立したAIがいつか人間を打ち負かし、社会を征服してしまうのだろうか、という不安の声もよく耳にする。それは何やら映画「マトリックス」を思い出させる世界である。

 

この本では25名の識者がAIについて語るが、全てがコンピュータ・サイエンスの専門家ではない。科学評論家もいれば、量子力学者、はたまた遺伝子学者と、幅は広い。

 

これらの専門家の間でも、AIが人間にとって代わるのかという疑問については、意見が分かれる。もっともいずれの論も随筆であり、ギリギリと科学的に物事を詰めた論文ではない。そもそもAI自体がまだ発展途上の段階にあり、詰めた議論には成りようもない。

 

一方で人が進化の中で知能というものを発展させてきたのだから、AIがその行程を辿れないはずはないという意見もあれば、他方でディープラーニングは入手したデータに基づいて最適解をコンピュータが自立的に求めたものに過ぎないという意見もある。さらには、今の最も優れたAIであっても、学習という点で四歳児に勝つことは出来ないだろうというものまである。

 

各専門家の記述は随筆的であるがゆえに面白いと思うものもあれば、はっきり言ってそうでない記述もある(勿論それは、読者の関心と嗜好次第で異なるものではある)。内容が少々重たいので気楽にとは言わないが、AIに関心がある方ならば一読するもの良い。

 

 

説明: SY01265_「古い書評」目次に戻る。

 

説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: door「ホームページ」に戻る。