人口減少
(2022/7/25)
日本経済新聞のウェブ版が人口問題を様々な視点で取りあげている。日本の少子化はもはや珍しくないテーマであるが、ロシアのウクライナ侵略を人口問題という切り口で論じているのはなかなか面白い。
プーチンがピョートル大帝が作り上げた大ロシアの幻想に囚われているというお話は、日経新聞に限ったものではないが、ソ連の崩壊からその後の人口減少がプーチンを大国復興への妄想に駆り立てたという話にはそれなりの説得力がある。
ロシアはソ連崩壊後の1992年に出生と死亡の数が逆転し、人口衰退期に入った。ソ連が崩壊する直前の1998〜89年のロシアの合計特殊出生率は2を超えていたが、今は1.5である(それでも日本の1.36よりは高いが)。大国の条件の一つに人口の大きさがある。例え1人あたりGDPが低くとも、大きな人口は力である。この点は日本も同じで、1億2600万人という人口はそこそこ大きい。日本は1人あたりGDPでは世界第28位に過ぎないが、人口を掛け合わせれば立派に世界第3位になる。
GDPでいえば韓国やイタリアに及ばないロシアが大国であることを主張しようとすれば、それは6000発に及ぶ核弾頭と多くの人口、そして広い国土くらいだろう。ロシアから離れようとしているウクライナを力ずくで併合し、住民にロシア国籍を強制するという発想はピョートル大帝的な発想に帰結する。
日経新聞の論点として、大国が凶暴化するのはその最盛期ではなく、人口減少と国力の衰退が始まった時という。
ロシアから中国に目を転じれば、同じような問題点が内在する。かつての一人っ子政策のお陰で、中国の出生率も相当低い(と推定される)。少なくとも経済発展の著しい大都市部では事実である。経済成長の鈍化、人口減少と老齢化、それが社会不安と不満に結びついた時、権威主義的一党独裁の中国が、東アジアで軍事力による現状変更に踏み出す可能性は否定できない。内政問題の外政問題(国家安全保障)へのすり替えである。習近平が民主化を主張する香港を力ずくで押さえ込んだように、台湾に軍事侵攻するというシナリオは、あながちあり得ない話でもなかろう。