東京オリンピックの裏に潜む闇 (2010/9/23)
一昨日、朝日新聞が、東京五輪・パラリンピック招致委員会が業務委託したシンガポールのコンサルタント会社ブラック・タイディングズ(BT)社から、約37万ドル(約3700万円)が国際オリンピック委員会(IOC)の有力委員の子息と会社に送金されていたことが分かったと報じた。この話はかねてよりフランスの捜査当局が調べていた事件であり、その資料から判明したという。
東京オリンピック委員会が招致のために票の買収を行ったというニュースが流れたのは今から二年前である。英紙ガーディアンが「日本の五輪招致委員会がIOC関係者に送った金は買収目的の意図があったとブラジル検察当局が結論づけた」と報じたことが切っ掛けであった。
その後この問題を巡り、フランス当局が招致委員会の理事長であった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長の訴追に向けて手続きに入ったと現地紙が報じた。フランス当局は、招致委員会がBT社に支払った約2億3000万円が買収目的の裏金であったと疑って調べている。これに対して、竹田会長は支払は否定しておらず、この金はコンサルタント料であると主張している。(朝日新聞2019年1月11日)
竹田氏は既にJOCを辞任しており、この問題の真相はフランスの司直の手に委ねることになる(不思議なことに、日本の検察当局がこの件で何か動いたという話は聞かない)。
昨日の朝日新聞の記事に続いて、今朝、共同通信が招致委員会がBT社を含めて海外送金した金額は11億円に上ると報じた。しかし、BT社を除いて具体的な送金先や内訳は不明という。
この手のきな臭い話は長野冬季オリンピック開催の時にもあった。招致をモノにするため、招致委員会がIOC委員に猛烈な接待攻勢をかけたことが知られている。IOCによる開催予定地の現地調査だけでなく、調査委員長が家族を呼んで行った私的な旅行の費用も招致委員会が支払ったことが報告されている。極めつけは、オリンピック終了後、委員会は帳簿を焼却して、証拠を隠滅した。その後の調査で、使途不明金が9000万円あったという報告が出ている。
ことほどさように、オリンピックの開催を巡っては、贈賄に係わるスキャンダルが出て来る。別に日本に限ったことではなく、海外でも訴追された事例は結構ある。
さて、2020年東京オリンピックはコロナ・パンデミックで来年に延期された。が、来年夏までにこのパンデミックが収束するという保証は全くないし、悲観的でもある。
贈賄疑惑にまみれた2020年東京オリンピック。はたして、延期に伴う費用をさらに上積みして開催する意義があるのだろうか。今やオリンピック開催は巨額の金が動く利権商売になり、オリンピック精神すら疑われる。
来年の東京オリンピック、いっそのこと止めてしまったらと思うのは私だけではなかろう。パンデミックで外国からの参観者はまず期待できないし、選手が来日できるかどうかすら分からない。面子のために開催することが目的化するならば、すでに使った金(サンクコスト)に引きずられ、傷口を広げるだけである。