法人税率の引き下げ(2014/6/18

 

 

安倍政権は産業競争力会議で新しい成長戦略の素案をまとめ、その中に法人税の引き下げを盛り込んだ。具体的な話はこれからの議論となるが、実効税率を数年で20%台に下げるという方向性を示した。

 

経済界は勿論これに大賛成、東大の伊藤教授のようにこれを評価支持する意見も出ている(伊藤教授が経済について非常にリベラルな立場をとることはご存じのとおりである)。言うまでもなく、朝日新聞のような批判的な意見もある。

 

賛成意見の論理は極めて明快で、日本の産業競争力を疎外している要因として、「高い賃金」、「高いエネルギーコスト」、「厳しい労働規制」、そして「高い法人税」をあげる。

 

これに対して反対意見は、財政問題の解決に手を打ってからの話というものである。これは税収中立を前提として、代替財源を担保してからの話だ、というものである。反対意見の代表格として、朝日の社説は税率の高さが国際競争力を下げ、海外からの投資の促進を疎外しているという経済界や経産省の意見は検証されていないと言うが、高い税率が不利な条件となっていることは明らかである。他の条件が同じであれば、企業にとって税率が低い方がインセンティブとなるのは自明である。さらに、昨日の新聞に、トヨタが米国本社をカリフォルニアからテキサスに移転する事を決めたとの記事があった。カリフォルニアから逃げ出した理由は極めて簡単、規制の煩雑さと税率の高さである(一方、テキサスは州の所得税がゼロ)。企業に対する優遇税制の提供は、直接投資促進の定石である。

 

今の日本にとって最も重要なことは、停滞した日本経済をどのように成長路線に乗せるかである。DGP200%を超える日本の財政赤字は深刻であるが、これを解決するには経済成長によって税収を増やすしかない。ポールクルーグマンではないが、過去どの国をとっても、国の借金を返したところはない、インフレと経済成長で帳消しにしただけの話である。

 

日本の経済構造の急速な変化を見れば分かるように、もはや物作りで富を稼ぐ時代ではない。生産拠点がコストの安い海外に出て行くのは当たり前である。日本の経常収支の黒字は貿易収支ではなく、所得収支が支えている。つまり、企業が海外で稼いだ利益の送金である。これとても、いつまでも海外で稼いだ利益が日本に送られるわけではない。国内での資金需要(投資)がないならば、海外に利益を蓄え、海外でそれを使うことになる。グローバル企業となれば、統括会社を税率の低いシンガポールに設立して、そこに利益を送った方が理に叶っている。そうなれば、日本国内のオペレーションは日本市場への対応だけとなる。

 

そのような状況になれば、日本は雇用問題、つまり欧米のように失業率が経済問題の中心になる。人口構成が老齢化していく中、日本の産業構造を未来型に変え、雇用を支えなければならない。そのためには海外からの投資は欠かせないし、当然、他の国より魅力のある投資環境が不可欠である。投資の阻害要因は税制ばかりではないが、せめて税制くらい下げなければ、日本への投資はますます魅力に乏しくなる。

 

 

 

 

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