消費税還元セール禁止法 (2013/4/27)
消費税還元セールの禁止を巡って、これに反対する声が高まり、自民党政府の説明が大きく変わった。政府は、当初の段階で、「全品値下げ」や「3%還元セール」といった表現を禁止しようとしたが、さすがに小売業界からの反発が強く、軌道修正に追い込まれてしまった。この間の成り行きは、次のようなものであった。
消費者庁による4月24日の国会審議での説明は、「消費税という言葉がなくても、関連が明らかな場合は禁止される」と答弁し、消費税を連想させるセールを幅広く制限する考えを示した。しかし、26日になって「消費税や税に触れていない広告であれば、基本的に禁止の対象にならない」と答弁を変えている。(朝日新聞ウェブ版4月27日)
小売業界にしてみれば、値引きして販売促進するのは商売の自由であり、政府にとやかく言われる筋合いはないというわけである。最終商品の価格決定は、売り手と買い手の間の問題である。売り手の利益は、市場で合意に至った価格からコストを引いたものであり、そこから消費税を払ったら赤字になるのか、黒字になるのかは、売り手が判断する問題である。
政府の説明は、中小が原材料や仕入れ時に支払った消費税分を、納入価格に上乗せしないよう大手から圧力が掛かる「下請けいじめ」を避けるために、この法案を提出したというものである。が、この問題が起きた根本には、日本の消費税をいい加減な形で導入したつけが回ったことにある。そもそも、出だしからいい加減な税制だったからこそ、後々、姑息な対応に迫られることになる
消費税とは付加価値税(VAT)と同じであるという説明があるが、これは本質的に違っている。VATでは、事業者が原材料を購入した際に、原材料分の付加価値税は仕入れ先の業者に支払い済みという証明書(インボイス)を受け取る。もしこのインボイスがなければ、その事業者が支払う消費税から仕入れ分の消費税は控除できない(だからこそ、事業者の各段階で付いた付加価値に従って課税されるという仕組みが成り立つ)。
ところが日本の消費税では、このインボイスが存在しない。日本の場合は、仕入れコストを基に見なしで控除されるべき税額を計算する。つまり、下請けに払ったかどうかは問われない。であるが故に、上述の「下請けいじめ」のように、本来下請けに支払うべき消費税分を踏み倒せば、その分、丸儲けになる。これだけではない。年間売上1000万円までの零細事業者は消費税の支払い義務はない。ここでも、消費税は丸儲けになっている(ちなみに、私は、「当方、零細事業者なので消費税は頂きません」という店に出会ったことがない)。
ことほどさようにいい加減な税制を導入するから、次々とぼろが出てくる。